木曽電気製鉄

木曽電気製鉄株式会社の概要

木曽電気製鉄株式会社（きそでんきせいてつ）は、1918年に設立された日本の電力会社であり、短期間ながら重要な役割を果たした。設立の背景には、実業家福澤桃介の意向が大きく影響しており、木曽川や矢作川での電源開発を目指していた。また、電力を利用した製鉄事業への参入も目的の一つであった。

設立と初期の活動

木曽電気製鉄は、名古屋電灯株式会社の「臨時建設部」および製鉄部門から独立して発足した。設立当初の資本金は1700万円で、当時の日本の電力産業においても先進的な企業として位置づけられていた。本社は名古屋市に置き、東京支店も設けられた。取締役社長には福澤桃介が就任し、これにより企業の成長が期待された。

設立にあたって引き継いだ資産には、展開中の水力発電所の建設や電気製鉄事業のための資産が含まれていた。その中には、賤母発電所や串原仮発電所の建設が進行しており、これらが後の電力供給を支える基盤となった。

社名変更と合併

設立翌年の1919年には、社名を木曽電気興業株式会社に変更し、同年11月には大阪送電株式会社を設立した。これは関西地域への電力供給を目的としており、電力事業の拡大に寄与した。

1921年、大同電力株式会社が発足する中で、木曽電気興業は日本水力と共に吸収合併された。この合併により、木曽電気の資源や技術は新たな企業に受け継がれることとなり、電力業界におけるさらなる再編が進行した。

水力発電所の開発

木曽電気製鉄は、名古屋電灯から継承した木曽川流域の水利権を活かして、賤母発電所や大桑発電所の建設を推進した。特に賤母発電所は1919年に運転を開始し、電力の供給が行われるようになった。この発電所は、その後も増設工事が行われ、出力の向上が図られた。

木曽電気製鉄は、北陸地方の電力需要にも対応すべく発電所の設計、建設を進め、様々な地域に電力を届ける体制を構築した。これにより、電力供給の脆弱さが徐々に解消され、地域の経済成長にも寄与した。

電気製鉄事業の取り組み

木曽電気製鉄は、電力供給だけでなく、電気製鉄事業にも着手した。1917年には製鉄部を設立し、名古屋市南区で電気炉による製鋼を試みた。これにより、国内で初めて電気を利用した製鉄が実現されると期待された。しかし、第一次世界大戦の影響や技術的な問題が重なり、事業は思惑通りには進行しなかった。

最初の生産は一定の成功を収めたが、後に続く電力不足や市場の変化により、事業は停滞を余儀なくされた。電気製鉄の実用化は、新たな製鉄技術を求める声を高め、この後の産業発展にも影響を及ぼすことになる。

大同電力への移行

1921年に木曽電気興業が解散し、大同電力への合併が完了したことで、木曽電気製鉄の遺産は引き継がれた。大同電力はその後、木曽電気の手がけた発電所を含む多くの資源を活用し、業界の中で大きな地位を確立することとなる。

本会社が残した影響は、木曽地域の歴史や電力業界、さらには日本の製鉄業にも色濃く反映されることとなった。短命ながらも、木曽電気製鉄株式会社は新しい産業の流れを切り開いた企業であったと言える。

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