木村久

木村久（きむら きゅう）

木村久（1908年 - 1937年）は、昭和初期に活躍した日本のプロボクサーです。本名は木村久五郎。「木村久」はリングネームであり、その勇猛果敢な戦いぶりから、アメリカでは「ノックアウトQ」の異名で恐れられました。彼の波乱万丈な生涯は、絵物語『ノックアウトQ』のモデルにもなっています。岩手県花巻市出身。

生涯

岩手県から上京後、浅草で職を得た木村は、近所のボクシングジムを偶然覗いたことをきっかけにボクシングの世界へ足を踏み入れます。その才能はすぐに開花し、草試合での活躍が、当時名選手として名を馳せていた荻野貞行と佐藤東洋の目に留まります。二人は木村を自らが設立する帝国拳闘協会（帝拳プロモーション）にスカウトし、木村はプロボクサーとしてのキャリアをスタートさせることになりました。

1926年7月、帝拳創立記念試合で、佐藤東洋との模範試合という形でデビューを飾ります。翌月には、佐藤との6回戦を引分けで終えました。同年9月、帝拳はアメリカ遠征を敢行し、木村もその一員として渡米します。サンフランシスコでのタイガー・ナポレオンとの初戦をKO勝利で飾ると、その後もアメリカ人選手を相手に5連勝を記録。帝拳一行が帰国した後も、木村はアメリカに残り、各地を転戦。「ノックアウトQ」の名は、アメリカのボクシング界に轟くこととなりました。

一時帰国後、木村は再びアメリカへ渡り、日本人として初めてマディソン・スクエア・ガーデンのリングに立ちます。この歴史的な舞台で1ラウンドKO勝利を飾るなど、5勝1敗1分という好成績を残して帰国。その後もアメリカやハワイで活躍を続けました。

引退後は、帝拳のトレーナーとして後進の指導にあたりますが、1937年4月、就寝中に心臓麻痺により急逝。28歳という若さでした。

死後

木村の死後、彼の生き様は、多くの人々に影響を与えました。1949年から1951年にかけて『漫画少年』誌上で連載された絵物語『ノックアウトQ』は、木村久をモデルにしたボクサー・戸村久五郎の活躍を描いた作品です。作者は、木村と同い年で、15歳ごろから木村と共に製販所で働いて親友となった絵物語作家の山川惣治。劇中には山川をモデルにした少年も登場します。

『ノックアウトQ』は、後のボクシング漫画に多大な影響を与えました。漫画原作者・梶原一騎は大ファンであり、ボクシング漫画『あしたのジョー』誕生のきっかけになったと言われています。

木村久は、短い生涯ではありましたが、その強烈なインパクトは、ボクシング界のみならず、漫画の世界にも大きな足跡を残しました。彼の不屈の精神と、リングで見せた輝きは、今もなお語り継がれています。

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