木村嘉孝 (棋士)

木村嘉孝：個性と粘り強さで彩られた棋士人生

木村嘉孝(きむら よしたか)は、1931年3月26日生まれ、2019年2月28日没の将棋棋士です。東京都中央区出身。棋士番号は80。木村義雄十四世名人という、日本将棋界のレジェンドに師事したことで知られています。

終戦直後、15歳から16歳の頃に将棋を始めました。早稲田大学在学中には、木村義雄十四世名人の長男である木村公正氏とともに学生将棋界で頭角を現し、1951年に1級の段位で木村十四世名人に入門。その後、1960年10月1日に四段でプロ入りを果たしました。

プロ入り直後の1959年度には、第3回古豪新鋭戦で優勝という輝かしい実績を残します。順位戦では、16期と17期C級2組順位戦で2年連続で次点（3位）という好成績を収めました。デビューが遅かった木村嘉孝にとって、この頃はまさにピークと言えるでしょう。しかし、その後も順位戦での陥落の危機に幾度となく直面しながらも、粘り強く60歳まで現役を続けたその棋士人生は、並々ならぬ意志の強さを物語っています。

木村嘉孝氏の棋風は、振り飛車党として知られていました。向かい飛車、三間飛車、四間飛車、中飛車と、様々な戦法を操り、軽快な指し回しで知られています。居飛車党の相手に対しては、振り飛車党として立ち向かい、逆に相手が振り飛車党の場合は居飛車を指すなど、柔軟な対応力も持ち合わせていました。また、勝負が決したと判断した際には、潔く投了する場面も多かったようです。

容貌もまた、木村嘉孝氏を特徴付ける要素でした。西郷隆盛や石原裕次郎を思わせる、力強い目と太い眉は、将棋界では珍しいタイプでした。

興味深いエピソードとして、後に名人位・永世棋聖の称号を得る佐藤康光九段のプロ公式戦における最初の対戦相手が木村嘉孝氏であったことが挙げられます。1987年5月26日に行われた早指し将棋選手権予選で、事情により木村嘉孝氏が欠場したため、佐藤九段は不戦勝でプロ初勝利を飾りました。これは、棋界において非常に珍しい記録となっています。

昇段は、1951年に1級、1960年に四段、1973年に五段（贈五段）、1989年に六段（勝数規定）、そして引退後の2003年には七段（引退棋士規定）に昇段しました。

通算成績は241勝479敗。主な成績として、古豪新鋭戦優勝1回を誇ります。また、現役勤続25年表彰(1985年)も受けています。

木村嘉孝氏は、その独特の棋風、粘り強い戦いぶり、そして個性的な容貌で、将棋界に独自の足跡を残した棋士と言えるでしょう。彼の棋士人生は、将棋を愛する者にとって、いつまでも記憶に残るものとなるはずです。

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