木村尚三郎

木村尚三郎

木村尚三郎（1930年4月1日 - 2006年10月17日）は、日本の西洋史学者で、特にヨーロッパ史、中でも中世史を専門としていました。東京大学名誉教授、静岡文化芸術大学名誉教授、地域経済総合研究所名誉評議員などの要職を歴任しました。

経歴

東京都杉並区に生まれた木村尚三郎は、1948年に東京都立第十三高校を卒業後、旧制東京高校を経て東京大学文学部西洋史学科に進学しました。そこで中世史の大家である堀米庸三に師事し、中世フランスの荘園研究を始めました。1953年に東京大学を卒業後、同大学大学院に進みました。

研究者としてのキャリアは、1958年に日本女子大学文学部助教授としてスタートしました。その後、1959年に旧・東京都立大学法学部助教授に転じ、1966年には東京大学教養学部助教授に就任しました。1976年には教授に昇格し、1990年に東京大学を定年退官、東京大学名誉教授となりました。

東京大学退任後は、1997年より食料・農業・農村基本問題調査会会長、1998年より財団法人トヨタ財団理事長を務めました。2000年には、静岡文化芸術大学の初代学長に就任しました。これは、同大学の初代学長予定者であった高坂正堯の急逝を受けたものでした。2005年には愛知万博総合プロデューサーに就任し、続いて平城遷都1300年記念事業総合プロデューサー・理事長に就任しましたが、イベントの開始を待たずして、2006年10月17日に肝細胞癌のため東京都で逝去しました。享年76歳。墓所は多磨霊園にあります。没後の2010年10月には、生前に学長を務めた静岡文化芸術大学より名誉教授の称号が追贈されました。

研究内容・業績

木村尚三郎は、中世ヨーロッパ史、特に13世紀フランス中世の荘園史・法社会史の研究からスタートし、学界で活躍しました。研究者としての活動に加え、歴史学者の視点から現代文明論や、音楽・映画批評、料理や生活文化に関する著作を幅広く手がけました。文明批評や文化論にも貢献し、その活動は多岐に渡りました。

また、日欧の比較文明論や文明史に関するエッセイを新聞雑誌に多数執筆し、NHK教育テレビ「N響アワー」の司会をなかにし礼、芥川也寸志と三人で務め、洒脱なヨーロッパ的教養人として広く知られました。NHKアニメ「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル」では時代考証を担当し、集英社の『学習漫画　世界の歴史』シリーズの監修も務めました。

思想的には美と秩序を愛する穏健保守の立場を取り、国民生活審議会会長、国土緑化推進機構理事長などの多くの公職を歴任し、朝日新聞フォーラム「21世紀の日本」委員会委員等も務めました。首相官邸直属の諮問機関である食料・農業・農村基本問題調査会の会長に就任し、「くらしといのち」を基本政策とした食料・農業・農村基本法の立ち上げに尽力しました。

受賞・栄典

1975年：『ヨーロッパとの対話』 で、第23回日本エッセイスト・クラブ賞受賞
1990年：東京大学名誉教授　運輸大臣より第37回交通文化賞受賞
1997年：第48回NHK放送文化賞を受賞。
1997年：第45回[横浜文化賞]を受賞。
2007年：日本醤油協会より醤油文化賞

著書

単著（多数）
『中世の森の中で』(生活の世界歴史 6) 堀越孝一・渡辺昌美・堀米庸三 河出書房新社 1975
『西欧精神の探究　革新の十二世紀』堀米庸三共編、日本放送出版協会 1976

(他多数)

木村尚三郎は、西洋史研究者としてだけでなく、文化人としても多大な足跡を残しました。

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