木村紅美

木村 紅美

木村 紅美（きむら くみ）は、1976年1月5日に兵庫県尼崎市で生まれた日本の小説家です。幼少期から神奈川県横浜市、東京都杉並区、福岡県福岡市、千葉県千葉市と各地を転々と移り住んだ後、小学校6年生の時に宮城県仙台市に移り、以降、この地で中学・高校時代を過ごしました。宮城県仙台向山高等学校を卒業後、明治学院大学文学部芸術学科に進学し、大学では文芸評論家、映画研究者である四方田犬彦氏に師事しました。大学卒業後には、個性的な商品セレクトで知られる書店、ヴィレッジヴァンガードの下北沢店での勤務経験も持っています。

作家としてのキャリアは、2006年に「風化する女」で第102回文學界新人賞を受賞したことから本格的に始まりました。この受賞は、文壇に新しい才能が登場したことを強く印象づける出来事となりました。受賞作を表題とした初の単行本『風化する女』が2007年4月に文藝春秋から刊行され、その繊細かつ独特な筆致が注目を集めます。同年9月には角川書店から短編集『島の夜』を刊行、2008年2月にはメディアファクトリーより『イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集』を刊行するなど、初期から精力的な創作活動を展開しました。

その後、木村紅美氏は文学界の主要な文学賞において、度々その作品が候補に挙げられるようになります。

2008年:「月食の日」が第139回芥川龍之介賞の候補となる。この作品は2009年9月に文藝春秋から単行本化され、「たそがれ刻はにぎやかに」を併録。
2013年:単行本『夜の隅のアトリエ』が第35回野間文芸新人賞の候補に選出される。
2017年:「雪子さんの足音」が第158回芥川龍之介賞の候補となる。
2018年:『雪子さんの足音』（講談社、2018年2月刊）が第40回野間文芸新人賞の候補に選出される。同作は2019年に映画化も実現。
* 2023年:『夜のだれかの岸辺』（講談社、2023年3月刊）が第40回織田作之助賞の候補となる。

これらの候補歴は、彼女の作品が常に文学界の注目を集め、その質の高さが広く認められていることの証と言えるでしょう。

特に重要な受賞としては、2022年に河出書房新社から刊行された『あなたに安全な人』が、第32回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞したことが挙げられます。この賞は、権威ある文学賞の一つであり、木村氏のこれまでの文学活動における大きな節目となりました。

また、2020年には「しんぶん赤旗」紙上で「あの子が石になるまえに」を約7ヶ月間にわたり連載するなど、発表媒体を広げて創作を続けています。これまでに刊行された単行本には、上記の他に『花束』（朝日新聞出版）、『見知らぬ人へ、おめでとう』（講談社）、『黒うさぎたちのソウル』（集英社）、『春待ち海岸カルナヴァル』（新潮社）、『まっぷたつの先生』（中央公論新社）などがあります。これらの作品を通じて、木村紅美氏は現代社会に生きる人々の内面や、日常の中に潜む不穏さ、あるいは微かな光を独自の感性で描き出しています。

単行本未収録の作品も多数あり、例えば「ねぐら探し」（『文學界』2007年6月号）、「卵を産む少女」（『小説すばる』2008年6月号）、「あの子が石になるまえに」（『しんぶん赤旗』連載）などが各種文芸誌等に掲載されてきました。

宮城県仙台市での多感な時期の経験や、大学で受けた文学的、批評的教育が、その後の創作活動に影響を与えている可能性は高いでしょう。様々な土地での生活経験を持つ彼女の作品は、特定の場所に固定されず、普遍的な人間の感情や関係性を問い直す力を持っているとも言えます。

現在も精力的に執筆活動を続けており、2025年には新作『熊はどこにいるの』の刊行が予定されています。今後のさらなる活躍が期待される小説家です。

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