木村英夫

木村英夫（きむら ひでお）は、明治42年（1889年）3月20日に生まれ、平成13年（2001年）8月22日に没した、日本の造園系都市計画家です。

生い立ちと都市計画への道

島根県浜田市に中学校教師の父の長男として生まれました。9歳の時に母を亡くし、父方の農家で育ち、幼い頃から田植えや畜牛、養蚕といった農作業を手伝いました。その後、父の転任に伴い兵庫県西宮市へ移り住み、芦屋の旧制甲南中学校・高等学校で学びました。当初は医師を志望していましたが、植物学を専門とする父の影響で自然科学に興味を持つようになります。さらに、父の元教え子であった西宮市土木課長から「市民の健康を支える公園づくり」という公共的な仕事の魅力を教えられたことが、都市計画、特に造園分野への進路を決める大きなきっかけとなりました。

キャリアの形成

昭和8年（1933年）、東京帝国大学農学部農学科を卒業。大学では丹羽鼎三に師事しました。卒業後は1年間、大学で副手を務めた後、就職難の時代にあって内務省都市計画大阪地方委員会や神宮司庁などで事務嘱託として奉職しました。昭和12年（1937年）からは内務技手として内務省計画局都市計画課に勤務し、後に防空総本部へ異動、終戦を迎えるまで、戦時下の都市計画、特に防空関連の業務に深く携わりました。

戦中・戦後の貢献

戦時中には、皇紀2600年記念事業に伴う神都計画や神宮関係施設の計画、東京緑地計画に続く防空を含む総合都市計画の立案に中心的役割を果たしました。終戦後は、内務省国土局計画課、戦災復興院計画局施設課、総理庁建設院都市局計画課、建設省都市局計画課といった国の機関で、戦災復興事業に尽力しました。昭和24年（1949年）からは埼玉県へ出向し、土木部計画課長として都市計画の最前線を担いました。この埼玉時代には、江戸川の改修に関連する土地区画整理事業や国道17号バイパス計画、県立自然公園の指定などに大きな功績を残しました。また、昭和31年（1956年）に制定された都市公園法の運用にも携わっています。埼玉県の計画観光課長も歴任した後、昭和32年（1957年）に建設省計画局施設課長として国に戻り、その後再び埼玉県土木部長の要職を務めるなど、国と地方を行き来しながら日本の都市づくりに貢献しました。1964年の東京オリンピック関連施設計画でもその専門性を発揮しています。

多様な活動と専門家としての評価

行政職を退いてからも、埼玉県住宅供給公社専務理事、王子緑化株式会社技術顧問、沖縄熱帯植物管理株式会社取締役などを歴任しました。また、日本都市計画学会、日本造園学会では名誉会員となり、日本造園修景協会の会長や顧問も務めるなど、専門分野の発展に寄与しました。歴史風土審議会など各種審議会にも関与し、東京農業大学、東洋大学、東京大学などで非常勤講師として後進の指導にもあたりました。彼の戦前・戦中における都市計画の経験は、日本の都市計画史において非常に重要な意味を持っています。特に、著書『都市防空と緑地・空地』は、当時の都市計画の実態を知る上で貴重な資料として高く評価されています。

主な著作と受賞歴

主要な著作には、『都市防空と緑地・空地』（平成元年）、『日本庭園の源流に多大の影響を及ぼしたと思われる韓国の庭苑について』（昭和60年）、共著として『日本公園緑地協会五十年史』（昭和61年）や『造園修景大事典』（昭和55年）などがあります。その長年の功績に対し、建設大臣表彰（昭和28年、昭和41年）、埼玉県知事表彰（昭和31年）、公園緑地北村賞（昭和51年）、日本造園学会上原敬二賞（平成11年）など、多くの表彰を受けています。

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