木村重治

木村 重治（きむら しげはる）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の著名な西洋史学者であり、教育者です。1874年5月4日に奈良県で生を受け、1967年7月18日にその生涯を閉じました。立教大学の学長を務めたほか、長崎高等商業学校（現在の長崎大学）、東京商科大学（現在の一橋大学）、慶應義塾大学、台湾協会学校（現在の拓殖大学）、山口高等商業学校（現在の山口大学）などで教授や校長を歴任し、教育界に多大な足跡を残しました。

若き日の木村重治は、1892年7月に聖公会の奈良英和学校に入学します。この学校が中学校制に移行し廃校となったため、東京にあった立教学校（現在の立教大学）に転学。1894年6月に同校本科を卒業した後、同年9月に設けられた高等専修科に進み、1896年6月にこれを修了しました。

教育者としての道を歩むにあたり、海外での学びを深めることを志します。1897年9月に渡米し、ニューヨーク州のホバート大学に入学。1900年6月に卒業し、文学士（BA）の学位を取得しました。同年9月にはマサチューセッツ州ケンブリッジにある聖公会派神学校に進学し、さらに1901年9月からはハーバード大学大学院で西洋史と英文学を専門に研究しました。翌年にはハーバード大学史学会会員に推挙されるなど、その学識は高く評価されました。1903年6月には聖公会派神学校を卒業して神学士（BD）を取得し、同月にはハーバード大学大学院も修了して修士（MA）の学位を得ています。

学位取得後、1903年10月からは欧州各地を巡り、その後エジプト、インド、中国を経て、1904年に日本へ帰国しました。帰国後の1905年には米国公使館の翻訳官嘱託を務め、その後は立教大学、台湾協会専門学校、慶應義塾大学など、複数の教育機関で教壇に立ちました。1909年には山口高等商業学校の教授に就任しています。

1917年には東京高等商業学校の教授に転じ、1919年には英語社会学と史学の研究のため再び渡米しました。帰国後の1920年には東京商科大学の予科教授と附属商学専門部教授を兼任。また、官命を受けて満洲、韓国、中国への出張も経験しました。その後、長崎高等商業学校の校長に就任し、高等教育機関の運営にも携わりました。

長崎での任期を終えた後、再び立教大学に戻り、経済学部の教授および学部長を務めました。そして1932年、立教大学の学長に就任し、教育者としてのキャリアの頂点を極めます。

しかし、1936年にはチャペル事件と呼ばれる出来事により学長を辞任せざるを得なくなりました。これは、学長による天長節での教育勅語奉読の方式を巡り、配属将校の影響を受けた一部学生が騒動を起こしたことが原因でした。当時の日本は軍国主義の台頭により緊迫した状況下にあり、1931年の満洲事変以降、米国聖公会系のキリスト教主義学校である立教大学は、軍部からの思想的圧力に直面していました。「神と国との為に」という立教大学の教育方針が、配属将校によって批判されるなど、大学を取り巻く環境は厳しさを増していました。1942年には、大学の寄付行為目的が「基督教主義ニヨル教育」から「皇国ノ道ニヨル教育」に変更され、チャペルも閉鎖されるなど、軍国主義の思想が教育現場に深く影響を与えていましたが、戦後には再び「基督教主義ニヨル教育」を目的とする自由な学府としての姿を取り戻すことになります。

学長辞任後、1940年に開設された啓明学園の学園長に就任し、教育活動を続けました。戦後には、極東国際軍事裁判における弁護人を務めたほか、グルー基金の常務理事としても活動するなど、多岐にわたる分野で社会に貢献しました。

プライベートでは、子の木村重義氏が経済学者（会計学）として名を成しています。

また、木村重治は学生時代、卓越したスポーツマンでもありました。立教学校時代には野球の投手として活躍し、明治学院との試合で大勝するなど、その勇姿は語り継がれています。こうした経験から、スポーツに対しても深い理解と関心を持ち続け、1930年に立教大学商学部長に就任した際には、東京六大学野球リーグの試合を欠かさず観戦することを誓ったと伝えられています。

主な著作には、『東西交際之栞』（1908年）、『西洋史眼』（1908年、1916年）、『米国近世史』（訳著、1923年）などがあります。これらの著作を通じて、日本における西洋史研究の発展に寄与しました。

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