木梨軽皇子

木梨軽皇子（きなしのかるのみこ）

木梨軽皇子は、生没年不詳の古墳時代の皇族です。允恭天皇の第一皇子として生まれ、皇太子に指名されました。その生涯は、美貌と悲劇的な恋愛によって彩られています。

生涯

木梨軽皇子は、允恭天皇と忍坂大中津比売命の間に生まれました。同母の兄弟には、後の安康天皇となる穴穂皇子や、雄略天皇となる大泊瀬稚武皇子などがいます。

『日本書紀』には、木梨軽皇子の容姿について「容姿佳麗。見者自感」と記されており、その美しさが特筆されています。これは、日本書紀において、これほどまでに美男子であることを強調されている唯一の皇子です。人々は、彼に拝謁しただけで感動を覚えたとされています。

しかし、『古事記』によれば、允恭天皇23年に皇太子に立てられたものの、同母妹である軽大娘皇女と密かに情を通じ、その関係が露見。これが原因で、允恭天皇の死後、皇太子の地位を廃され、伊予国へと流刑に処せられました。

その後、軽大娘皇女は後を追うように伊予国へと向かい、二人は共に自害したと伝えられています。この伝説は、「衣通姫伝説」として語り継がれています。一方、『日本書紀』では、軽大娘皇女が先に伊予国へ流刑となり、その後允恭天皇が亡くなった允恭42年に、穴穂皇子によって木梨軽皇子が討たれたと記されています。どちらの記述が正しいかは定かではありませんが、いずれにしても、木梨軽皇子の生涯は悲劇的な結末を迎えたことがわかります。

墓所

木梨軽皇子の墓所と伝えられているのは、愛媛県四国中央市にある東宮山古墳です。現在、宮内庁陵墓参考地として指定されています。

参考文献

次田真幸 『古事記（下）』 講談社学術文庫、1984年
宇治谷孟 『日本書紀（上）』 講談社学術文庫、1988年



木梨軽皇子の生涯は、その美貌とは裏腹に、悲恋と悲劇に彩られたものでした。彼の物語は、古代日本の皇室における愛と権力、そして悲劇を象徴するエピソードとして、後世に語り継がれています。

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