東宮山古墳

東宮山古墳

東宮山古墳（とうぐうさんこふん）は、愛媛県四国中央市妻鳥町に所在する古墳です。古墳時代後期の6世紀代に築造されたと推定され、円墳または前方後円墳の形状を持つとされています。

概要

東宮山古墳は、法皇山脈の内海斜面に位置する独立丘陵の頂上付近に築かれています。古墳の北側には春宮神社が鎮座しており、地域の人々にとって重要な場所となっています。1894年（明治27年）に初めて発掘調査が行われ、多くの副葬品が出土しました。その後、1959年（昭和34年）と2013年（平成25年）にも調査が実施され、古墳の構造や出土品に関する知見が深められています。

現在の墳形は楕円形ですが、元々は前方部を北東に向けた前方後円墳であった可能性が指摘されています。埋葬施設は両袖式の横穴式石室で、北西方向に開口していましたが、現在は埋没しています。石室内からは、内行花文鏡や広帯二山式冠をはじめとする貴重な副葬品が多数発見されています。

この古墳は、当時の有力首長の墓と考えられており、近隣の経ヶ岡古墳と合わせて、宇摩平野における首長墓の変遷を研究する上で重要な遺跡とされています。

遺跡歴

安政年間（1855-1860年）：隣接する平坦地から組合式石棺が墳頂に移築されました。
1894年（明治27年）：地元民によって埋葬施設が発掘され、多数の副葬品が出土しました。これらの出土品は現在、宮内庁書陵部で保管されています。
1895年（明治28年）：宮内省（当時）によって陵墓参考地に治定されました。
1959年（昭和34年）：石室閉鎖に伴う現状調査が宮内庁委嘱のもと実施されました。
2013年（平成25年）：墳丘の外形調査が宮内庁書陵部によって行われました。

墳丘

現状の墳丘は楕円形で、最大径14.6メートル、高さ3.3メートルです。しかし、周囲の墳裾が削平されているため、本来はさらに大きな規模であったと考えられています。近年の調査では、墳丘の北東側の斜面が緩やかであることから、かつては前方部を持つ前方後円墳であった可能性が指摘されています。

墳頂には、緑泥片岩の板石で造られた組合式石棺（東宮山1号箱式石棺）が1基存在しますが、これは安政年間に隣接する平坦地から移築されたものです。この石棺内からは、弥生時代の銅鉾が出土しています。また、墳丘の北側広場中央には、別の東宮山2号箱式石棺も残っています。

埋葬施設

埋葬施設としては、両袖式の横穴式石室が構築されています。石室は北西方向に開口しており、その規模は以下の通りです。

石室全長：5.5メートル以上
玄室
長さ：4.17メートル
幅：奥壁底部1.96メートル、奥壁上部0.99メートル、玄門部1.86メートル、玄門部上部1.05メートル
高さ：奥壁1.73メートル、玄門部1.49メートル
羨道
長さ：1メートル以上
幅：玄門底部0.59メートル
高さ：1.2メートル

出土品

古墳からは、多種多様な出土品が見つかっています。

石室内出土

内行花文鏡：1面（長宜子孫銘、蝙蝠座II式、漢鏡6期、直径9.6センチメートル）
装身具
広帯二山式冠：1
耳環：2
青銅鈴：1
切子玉：7
管玉：3
平玉：2
棗玉：1
武器・武具
三葉文環頭大刀（環頭部）：2（新羅からの舶載品か）
大刀：多数（非現存）
石突：6（非現存）
銅鏃：多数（非現存）
横矧板鋲留衝角付冑：1
草摺：1
馬具
馬鐸：4（舌1含む）
飾金具：2
鏡板：2
辻金具：3
不明金属製品：多数（非現存）
須恵器：壺1、坏3、高坏1
不明土器：多数（非現存）

石棺出土

銅矛：1（弥生時代中期後半頃）
不明金属製品（非現存）
不明土器：2（非現存）

被葬者

東宮山古墳の実際の被葬者は明らかになっていませんが、第19代允恭天皇の皇子である木梨軽[[皇子]]の墓であるという伝承が古くから存在します。このため、宮内庁は本古墳を陵墓参考地に治定しています。

『日本書紀』によると、木梨軽[[皇子]]は允恭天皇の第一皇子として立太子しましたが、同母妹である軽大郎皇女との関係が発覚し、皇位を争った末に自害したとされています。

本古墳が木梨軽[[皇子]]の墓であるという確実な証拠はありませんが、地元での伝承や発掘調査の結果から、有力な首長の墓であると考えられています。

脚注

（記事執筆に使用した文献）

史跡説明板（川之江市設置）
宮内庁発行「妻鳥陵墓参考地墳丘外形調査および出土品調査報告」『書陵部紀要 陵墓篇 第68号 (PDF)』宮内庁書陵部、2017年。
川西宏幸「東宮山古墳」『世界大百科事典』平凡社。
「東宮山古墳」『日本歴史地名大系 39 愛媛県の地名』平凡社、1980年。ISBN 4582490395。
大谷猛「東宮山古墳」『日本古墳大辞典』東京堂出版、1989年。ISBN 4490102607。
北村文治「木梨軽太子」『国史大辞典』吉川弘文館。

（記事執筆に使用していない関連文献）

「妻鳥陵墓参考地東宮山古墳の遺物と遺構について」『書陵部紀要 第23号』宮内庁書陵部、1971年。
「妻鳥陵墓参考地駒形制札改修工事に伴う立会調査」『書陵部紀要 陵墓篇 第72号 (PDF)』宮内庁書陵部、2021年。
「附 金属製品ほか出土品の整理報告」
「妻鳥陵墓参考地出土品再整理報告 -総括篇- (PDF)」『書陵部紀要 陵墓篇 第73号』宮内庁書陵部、2022年。

関連項目

木梨軽[[皇子]]
衣通姫伝説
経ヶ岡古墳

外部リンク

* 東宮山古墳 - 四国中央市教育委員会文化振興課「四国中央市の文化財」)

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