木母寺

木母寺について

木母寺（もくぼじ）は、東京都墨田区にある由緒ある天台宗の寺院です。この寺院の起源は、976年（貞元元年）にまでさかのぼります。当時、忠円という僧が、亡くなった梅若丸を弔うために塚を築きました。この塚は「梅若塚」と呼ばれ、現在の墨田区堤通2-6という場所に位置しています。

梅若丸は貴族の子供で、「吉田少将惟房」として知られています。彼は5歳の時に父親を亡くし、7歳で出家し比叡山延暦寺に入山しました。しかしながら、彼の青春は兵乱に翻弄され、逃げる途中で人買いに騙され、現在の墨田区で捕らえられました。この梅若丸の悲しい物語は後に浄瑠璃などの伝統的な芸能の題材となり、「隅田川物」と呼ばれるジャンルを生むことになりました。

1590年（天正18年）、徳川家康から梅若丸とその塚の横に植えられた柳に因んで「梅柳山」という山号が与えられました。1607年（慶長12年）には、近衛信尹の手により「梅」の字の偏と旁が分けられ、現在の「木母寺」へと改名されています。江戸幕府からは朱印状も与えられ、江戸に下向する勅使たちが多く訪れたことが記録されています。

明治時代に入ると、神仏分離の動きによって木母寺は「梅若神社」となりましたが、1888年（明治21年）には再び寺としての姿を取り戻しました。その後、白鬚防災団地の建設に伴い、現在の位置に移転することになりました。

交通アクセスとしては、鐘ヶ淵駅から徒歩8分の距離にあり、寺院への訪問も容易です。境内には、1889年（明治22年）3月21日に三遊亭円朝によって建立された「三遊塚」があります。これは初代三遊亭圓生の追善のためのものであり、揮毫は山岡鉄舟（高橋泥舟）によるものです。また、碑の裏側には「泥舟逸人書」という言葉が刻まれています。

このように木母寺は、歴史的・文化的な価値を持つ場所であり、多くの人々に親しまれています。境内は静かで落ち着いた雰囲気が漂い、訪れる人々はその静寂を楽しむことができます。寺院の周囲には、隅田川や周辺の公園もあり、散策を楽しむには最適の地点です。地域の方々にとっても身近な存在であり、観光客にも多くの魅力を提供しています。

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