木津信用組合

木津信用組合（きづしんようくみあい）は、かつて大阪に本拠を置いていた信用協同組合です。一般的には「木津信」（きづしん）の略称で知られ、バブル経済期には急成長を遂げましたが、その後の経営悪化により、1995年（平成7年）8月30日に大阪府より業務停止命令を受け、破綻しました。

設立と発展の軌跡

この信用組合の起源は、1953年（昭和28年）に遡ります。大阪の木津卸売市場の創設者である花崎米太郎氏が、市場で生鮮食料品を扱う業者たちの相互扶助を目的として設立を呼びかけ、出資金を募って組合が作られました。破綻時に理事長を務めていた鍵弥実は、設立時に縁故で就職した人物でした。

1970年（昭和45年）、木津信は主要取引先の一つが倒産したことで経営危機に直面します。当時の預金量は大阪府内の信用組合の中で最低水準の約22億円に過ぎませんでした。しかし、鍵弥氏が主導した積極的な預金獲得キャンペーンが功を奏し、預金は短期間で倍増、この難局を乗り切ることに成功しました。これを機に、鍵弥氏は組合内部で実権を掌握するに至ります。

鍵弥氏のリーダーシップのもと、木津信は積極的な拡大路線を歩み始めます。1979年（昭和54年）には富国信用組合を、1986年（昭和61年）には大阪光信用組合をそれぞれ合併し、規模を拡大しました。その結果、1988年（昭和63年）には預金量が2200億円に達するなど、順調な成長を遂げているように見えました。

バブル経済期に入ると、木津信は資金運用をさらに拡大させますが、その手法には問題が含まれていました。特に、金融当局による大口融資規制を回避する目的で、次々と系列のノンバンクを設立し、それらのノンバンクに対して多額の資金を貸し付けるという方法が取られました。

破綻に至った背景

木津信は、最盛期には預金高が1兆円を超える規模にまで成長し、これは一部の地方銀行に匹敵するか、それをも上回る水準でした。しかし、この巨額の資金のほとんど全てが不動産関連の融資に集中して運用されていたため、1990年代初頭のバブル崩壊の煽りをまともに受け、経営は急速に悪化しました。外見こそ金融機関でしたが、その資金運用は、高リスク・高リターンを目指す投資ファンドに近い投機的な性格を強く帯びていました。

また、木津信は三和銀行をはじめとする大手都市銀行からの紹介を通じて、当時としては非常に高い金利で大口預金を受け入れていました。しかし、大蔵省（当時）の指導により、こうした高金利での預金受け入れが難しくなると、その引き上げ分を補うため、さらに高金利で大口預金者を集め、それに見合う高い収益を得るためにハイリスクな融資をさらに拡大するという悪循環に陥り、これが破綻の遠因となりました。

さらに、同じ大阪に拠点を置く東洋信用金庫と共に、当時世間を騒がせた尾上縫氏による巨額の詐欺事件に関与し、多額の貸し倒れが発生したことも、木津信の経営に深刻な打撃を与え、破綻の直接的な原因の一つとなりました。

木津信金の経営に決定的な打撃を与えたのは、破綻直前の出来事でした。1995年（平成7年）8月28日に発表されたコスモ信用組合の破綻処理策において、大口預金者の氏名公表や、彼らに対する預金利率の引き下げが明らかになりました。これにより、以前から経営不安が囁かれていた木津信から、大口預金を中心とした預金流出がさらに加速しました。特に破綻の直前には、住専問題で後に大きな問題となる末野興産が、386億円という巨額の預金を引き出していたことが後に判明しています。

破綻後の処理と影響

木津信の破綻に伴い、預金保険機構からはペイオフコスト（預金保護のために必要な費用）を大きく上回る1兆44億円もの資金が注入され、預金は全額保護されることになりました。定期預金の満期前の解約が一時的に制限されたことを除けば、預金者への払い戻しは滞りなく行われました。

しかし、預金と同様に販売されていた抵当証券については保護の対象外とされ、元本割れが生じる結果となりました。また、払い戻し作業を進める中で、日本銀行からの特別融資として受け入れた1億円が紛失するという事件も発生しています。

破綻後、木津信の店舗は順次閉鎖・統合され、最終的には本店一店舗のみとなりました。そして、1997年（平成9年）2月24日には、その全ての営業が株式会社整理回収銀行（現在の整理回収機構）の大阪支店に移管されました。その後、整理回収銀行大阪支店の業務も東京の本店に集約され、現在もそこで預金の払い戻しなどの対応が行われています。

破綻直後には、預金者が一斉に資金を引き出そうとする取り付け騒ぎが発生しました。支店には多くの人が詰めかけ、ほとんどの来店客が預金を全額引き出して帰途につきました。この状況を狙った犯罪も発生し、支店から出てきた客を尾行し、人気のない場所で金銭を強奪するという事件が頻発しました。

その他

木津信は、破綻当日までタレントの西村知美氏を起用したテレビCMを放映していました。また、当時の大阪府知事であった横山ノック氏は、業務停止命令の発令権者として破綻処理に関わりました。高金利預金については、テレビ番組「噂の!東京マガジン」で紹介されるなど、メディアでも注目されていました。

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