木野普見雄

木野普見雄について

木野普見雄（きの ふみお、1907年12月18日 - 1970年9月27日）は、昭和時代前・中期に活動した日本の作曲家で、本名は木野文男（きの ぶんお）。大分県出身であり、彼の作品は日本の音楽界に重要な足跡を残しています。

生い立ち

1907年に大分県速見郡杵築町（現在の杵築市）で生まれた木野は、木野政太の八男として育ちました。彼の文学に対する興味は早くから芽生え、旧制中学校在学中には「大分詩人」誌に詩を寄稿するなど、文芸活動を行っていました。1934年には、皇太子御降誕記念の作詞・作曲懸賞募集において『吾等の日本』で作曲部門の二等に入賞しました。当時、一等に選ばれたのは後の原爆を題材とした楽曲を手掛ける山本寿でした。

音楽家としての道

1937年には長崎日日新聞の記者となり、以降、社会部長や取材部長を歴任しましたが、1945年に長崎に原爆が投下され、彼の日常は一変しました。その日、木野は城山町の八幡神社近くで家族と暮らしていましたが、出勤途中に被爆し、家族全員を失いました。この悲劇は彼の音楽活動に大きな影響を与え、特に原爆歌曲の作曲に力を注ぐこととなりました。

彼が作曲した「鬼の哭く」は、戦災者救済資金のための演芸大会で演奏され、以後、原爆の悲惨さを伝える歌曲を多く手がけました。1949年には「平和は長崎から」を作曲し、長崎国際文化都市法の制定を祝しました。

多様な作品

木野は戦後、長崎県や出身地である杵築市を中心に、校歌や市歌、音頭を数多く作曲しました。彼の作品は地域の人々に愛され、彼の作曲した校歌の一部は現在も使われています。主な作品には、長崎市立沖田中学校や長崎市立愛宕小学校の校歌などが含まれています。また、音頭や自治体歌も手掛け、地域の文化に貢献しました。

自身の著作には『原子野のうた声 被爆作曲家の手記』や『学園の歌　木野普見雄作曲校歌集』などがあり、その中で彼の音楽に対する情熱や思想が表現されています。

最後の人生とLegacy

木野は1970年に62歳で亡くなりましたが、彼が遺した音楽は今も多くの人々に影響を与えています。戦後に再婚し、子供も持ちましたが、彼の音楽の財産は長男が継承しています。2021年には、彼の生涯を追ったドキュメンタリー『あの子〜原子野のうた声』も放送され、多くの人に再度その業績が知れ渡ることとなりました。

木野普見雄は、日本の音楽史において、特に原爆という悲劇から生まれた音楽の重要な担い手として、その名を刻んでいます。

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