未完少女ラヴクラフト

完結版：未完少女ラブクラフトの世界

「未完少女ラブクラフト」は、黒史郎によるライトノベル作品。コバシコによるイラストが彩る、全2巻の物語です。舞台は、クトゥルフ神話の世界観を彷彿とさせる架空都市アーカム。古めかしい建物と埃っぽい因習が漂うこの街で、数奇な運命を背負った登場人物たちが織りなす物語は、読者を不思議な世界へと誘います。


物語の中心人物は、19歳の青年、カンナ・セリオです。学校卒業後、就職に失敗し、実家のパブ「金羊毛」でウェイターとして働く彼は、美少女のような容貌とは裏腹に、心身ともに弱く、すぐにパニックを起こしてしまう繊細な人物。愛読書は『英雄ボルナンゾフの冒険』という、少し古臭い冒険小説です。


そんなカンナが出会うのが、少女ラヴクラフト。著名な小説家、ハワード・フィリップ・ラヴクラフトと同じ名前を持つ彼女は、身長130センチメートルほどの小柄な少女です。黒髪に色白の肌、そしてある特異な能力を持っています。彼女は「言語災」という呪いによって「愛情」に関する言葉をすべて失ってしまっているのです。しかし、代わりに、読んだ書物すべての内容を完璧に記憶するという驚異的な能力を身につけています。


ラヴクラフトにはある目的があり、それはカンナの世界「オアン」へ行くこと。そのため、彼女はカンナと共に、オアンへの旅路へと乗り出します。二人が旅の途中で出会うのは、アーカムのラブクラフト記念図書館司書ネア・ヴァーレンサス、魔女と呼ばれるヴィオリストのエイリア・ツァン、滅びかけた種族の生き残りユッグ・ゴッツ、そしてラヴクラフトの家に住み着く人面鼠ジェンキンなど、個性豊かなキャラクターたちです。


物語の背景には、オアンとスウシャイという、異なる二つの世界が存在します。オアンは私たちの世界、スウシャイは、ラヴクラフトたちが住むもう一つの世界です。そして、この二つの世界を行き来できる存在「時を穿つもの」や、「言語災」といった、謎めいた要素が物語に深みを与えています。また、ラヴクラフトの育ての親であるラバン・シュリュズベリィ教授やヘンリー・ウェイトレス・エイクリィといった、謎めいた存在も物語に関わってきます。


物語は、カンナとラヴクラフトの冒険を中心に展開していきます。彼らは様々な困難や謎に遭遇し、時に笑い、時に涙し、互いに支え合いながら、オアンとスウシャイの謎を解き明かそうとします。2巻では、アンブローズ・ビアスやワイルドといった新たな登場人物が登場し、物語はさらに複雑で魅力的な展開を見せます。そして、スウシャイに災害をもたらす謎の男「黄衣の王」の存在も、物語全体に影を落とします。


『英雄ボルナンゾフの冒険』の主人公ボルナンゾフや、「Cの触手」といった、物語独自の用語も登場し、クトゥルフ神話へのオマージュを感じさせる独特の世界観を作り上げています。「書徒」と呼ばれる、書物を崇拝する信者たちの存在も、物語にミステリアスな雰囲気を添えています。


「未完少女ラブクラフト」は、奇妙な冒険、個性的なキャラクター、そして謎解き要素が絶妙に絡み合った、魅力的なライトノベルです。クトゥルフ神話にインスパイアされた独特の世界観と、予測不能な展開に、最後まで目が離せなくなることでしょう。

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