未遂

未遂 (みすい)

未遂とは、犯罪の実行へと着手したものの、外部要因によってその行為を完了できなかった場合や、自らの意思により犯罪の実行を中止した場合を指す法的な概念です。この用語は、犯罪法における重要な区分として機能し、狭い意味では障害未遂を、広い意味では中止未遂や中止犯を含みます。未遂は、既遂（犯罪が実行され、結果が発生したこと）とは対照的な概念です。

概要

未遂犯という概念は、基本的に刑罰法規が既遂犯を前提に構築されていることに起因しています。未遂犯は、犯罪の基本的な構成要件に基づき、その行為が未遂に終わった段階で独自に処罰されることを許可します。これは、古くは結果責任主義のもとで、実際に発生した結果に基づいて責任が問われていた時代に対抗する形で発展してきました。

未遂の概念が明確化されたのは中世のイタリア法学においてで、カロリーナ刑法典では未遂犯に対する軽減処置が定められました。フランス刑法典（1810年制定）の条文も、未遂犯の現代的な解釈に大きな影響を与え、その後さらに発展を遂げたのが1871年のドイツ刑法典です。

近代的な学派の考えでは、犯罪は行為者の内的な危険性の表れと捉えられ、未遂犯も既遂犯と同様に処罰されるべきだとの立場があります。一方で古典的な考え方では、客観的な犯罪行為の側面に焦点を当て、結果発生の危険性に応じて未遂と既遂の責任の重さが異なるとされます。

日本法における未遂

日本の刑法では、未遂犯に関する規定があり、刑法第43条において未遂犯の各要素が定義されています。具体的には、自己の意思により犯罪を中止した場合は中止未遂とされ、その他は障害未遂と分類されます。未遂犯は通常、軽い処罰が適用される可能性がある一方で、中止未遂は特に自発的な中断として、必ず減軽または免除がなされることが義務付けられています。

未遂犯を処罰する際の法律的根拠は、刑法第44条において示されています。この条文により、未遂が処罰されるのは、個々の犯罪に関連した規定が存在する場合です。

障害未遂とその要件

未遂の成立には、犯罪の実行への着手がまず必要です。この着手の意味については、主観的な見解と客観的な見解の対立が見られます。また、未遂の要件には、「犯罪を遂げなかった」という条件も含まれ、実行行為が一部でも完了しなかったことが重要です。ここで、実行行為による未遂には、着手未遂と実行未遂の二つの側面があるものの、いずれも大きな違いを持たないとされています。

中止未遂

中止未遂は、自己の意思により犯罪の実行を中止した場合に適用され、刑法第43条後段に基づいて処理されます。これは、犯罪の遂行を自発的に放棄した行為として評価され、軽減規定が適用されます。

処罰規定

日本の刑法では、未遂を処罰するための具体的な条文も多く存在し、特に重大な犯罪に対する未遂の処罰規定が整備されています。未遂が成立した場合、各法律に基づいた処罰が適用されるため、法律の知識が不可欠です。

未遂に関する理解は、法的実務だけでなく、犯罪の予防や社会的安全保障の観点からも重要です。未遂について適切にその意義を把握し、理解を深めることで、犯罪抑止に向けたさまざまな方策が見えてくることでしょう。

もう一度検索