末広橋梁

末広橋梁：現役を続ける可動鉄道橋

末広橋梁は、三重県四日市市の千歳運河に架かる跳開式可動橋で、その特異な構造と歴史的価値から、鉄道ファンのみならず多くの人々を魅了しています。この橋は、単なる交通インフラを超え、産業遺産、近代化遺産としても重要な意味を持っています。

概要

1931年（昭和6年）に竣工した末広橋梁は、国内で唯一現役で使用されている跳開式可動鉄道橋です。5連の桁で構成され、中央の跳開部が四日市駅側を支点として、ケーブルで持ち上がる仕組みになっています。通常時は橋が跳ね上がっており、船舶の航行を可能にし、列車が通過する際には桁が降ろされます。平日は跳ね上げられた状態が基本ですが、休日には船の通行時のみ跳ね上げる運用となっています。

歴史と構造

設計は、橋梁技術者として名高い山本卯太郎が手掛けました。彼はアメリカで橋梁設計を学び、帰国後に山本工務所を設立。数々の可動橋を設計・建設しました。末広橋梁は、彼の代表作であり、鋼索型跳上橋という独特の形式を採用しています。この橋は、1998年に国の重要文化財に指定され、2009年には近代化産業遺産にも認定。2015年には日本機械学会の機械遺産にも認定されています。

運行と管理

末広橋梁を通過する列車は、主に太平洋セメントへセメントや土砂を運搬する貨物列車です。現在、1日に5往復運行されており、JR貨物が管理を行っています。しかし、実際の操作は関連会社の名古屋臨海鉄道に委託されており、定時に四日市駅から係員が自転車で駆けつける姿は、鉄道ファンにはお馴染みの光景となっています。

周辺の橋梁

末広橋梁の南側には、同じく跳開式可動橋である臨港橋が架かっています。こちらは自動車や歩行者用で、鉄道橋とは逆に、普段は降りていて船が通航する時に跳ね上げる運用です。2つの可動橋が並んで跳ね上げられる光景は、非常に珍しく、一見の価値があります。

文化的価値

末広橋梁は、橋梁技術の粋を集めた建造物であると同時に、四日市市の産業発展を支えた歴史の証人でもあります。その独特な構造と運用方法は、多くの人々に感動を与え、文化的な価値を高めています。これからも末永く現役で活躍し、その姿を後世に伝えていくことが期待されます。

末広橋梁は、鉄道技術、産業遺産、そして地域文化が融合した貴重な存在です。四日市を訪れた際には、ぜひ足を運び、その魅力を体感してみてください。

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