本多政利

本多政利：波乱に満ちた大名の生涯

本多政利（ほんだ まさとし）は、江戸時代前期の大名であり、大和郡山藩主・本多政勝の次男として生まれました。彼は徳川四天王の一人、本多忠勝の曾孫にあたります。

本多家の相続事情と郡山九六騒動

寛永18年（1641年）に生まれた政利は、本多家の複雑な相続事情に巻き込まれます。本多忠勝の家督は、長男の忠政からその二男・政朝へと引き継がれましたが、政朝の死後、幼少の長男・政長に代わり、政利の父である本多政勝が本家を継ぐこととなりました。

政勝は、父・忠朝以来の家臣である「雲州衆」を重用し、忠勝以来の譜代衆を冷遇したため、家臣団の間に激しい対立が生じました。さらに、政勝が実子の政利を後継に望んだことが、対立に拍車をかけました。

寛文11年（1671年）に政勝が没すると、本多家の相続問題は幕府の裁定に委ねられ、政勝の遺領15万石のうち、9万石を政長、6万石を政利が相続することとなりました（九六騒動）。この際、譜代衆は政長に、雲州衆は政利に付き、家臣団は二分される形となりました。

政利は郡山城内に住み、延宝元年（1673年）には参勤交代を行っています。

明石藩への移封と失政

延宝7年（1679年）、本多政長が急死すると、政利は3万石を返還し、播磨明石藩に移封されました。明石藩では、山手台地の小久保で新田開発に尽力しましたが、領民からの愁訴により、藩政の「不仁」が指摘される事態となりました。

陸奥大久保藩への減転封と改易

天和2年（1682年）、政利は城地を没収され、陸奥国岩瀬郡に1万石を与えられました。これは、家政の乱れと巡見使への不適切な対応が理由とされています。大久保藩は、実質的に収入が激減し、領民に重い負担を課したため、「悪政」との評価を受けました。

元禄6年（1693年）、政利は行状の悪さを理由に改易処分を受け、庄内藩主・酒井忠真に預けられました。改易の理由は、罪のない女性奉公人を殺害したためとされています。

庄内での幽閉と最期

庄内藩に預けられた政利は、粗暴な振る舞いを続け、幕府の知るところとなりました。政利の行状は死罪に相当するとされましたが、狂気として減免され、三河国岡崎藩主・水野忠之の預かりとなりました。宝永4年（1707年）、岡崎城内で死去しました。

人物像

政利は怪力の持ち主であり、大食家であったと伝えられています。一方で、酒色にふける人物という風説や、暴君としての伝承も残されています。例えば、猪を素手で締め殺した、町娘に手を出した、妻を殺害したなどの逸話が伝わっています。

補足

政利の長女は、実弟である本多忠英の養女となり、芦野資倍に嫁ぎました。二女は、忠英の長男である本多忠良に嫁ぎ、忠良は後に本多平八郎家の家督を継ぎました。

山本周五郎の小説「茶摘は八十八夜から始まる」や、映画『忍ジャニ参上! 未来への戦い』など、大衆文化においても本多政利は題材として取り上げられています。

本多政利は、その波乱万丈な生涯と毀誉褒貶相半ばする人物像で、歴史に名を残した大名と言えるでしょう。

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