本多錦吉郎

本多錦吉郎：多才な才能を開花させた明治の芸術家

本多錦吉郎（1851年1月3日 - 1921年5月26日）は、明治時代に洋画家、風刺漫画家、そして造園家として活躍した多才な人物です。号は契山。西洋の美術技法を日本に導入し、多くの弟子を育成した教育者でもありました。

生い立ちと初期の教育

本多錦吉郎は、広島藩の江戸屋敷で、本多房太郎の長男として誕生しました。幼少期に父を亡くし、15歳で家督を継ぎました。1863年、12歳で広島に下り、1865年には第二次長州征伐に従軍しています。

広島藩校の洋学所では、洋式兵学を学び、英語を村田文夫に師事し、その後、藩校の助教授を務めました。1871年に村田が工部省に出仕すると、本多も上京し、慶應義塾で英語を修めた後、工部省測量司の測量学校に入学しました。しかし、健康を害して退学することになりました。その際、測量学校の教師であったライマー・ジョンズに画才を認められ、洋画家への転身を勧められたとされています。

画家としての活動

1874年、本多は川端玉章に師事した後、英国帰りの国沢新九郎が主宰する『彰技堂』に入塾しました。翌年には分舎の塾頭となり、国沢の没後、遺言により彰技堂を継承しました。丸山晩霞、小川芋銭、下村為山、鳩山春子、松本民治、そして後に実業家となる村居銕次郎など、多くの弟子を育成しました。彰技堂では、国沢が持ち帰った英国の技法書を翻訳し、講義を行いました。その訳稿は『画学類纂』として出版されています。

1877年から1883年には、週刊新聞『団団珍聞』とその姉妹紙『驥尾団子』に風刺漫画を提供しました。小林清親が退社した後は、約1年半の間、同紙に関わっています。

1883年から1901年まで、陸軍士官学校と陸軍幼年学校で図画の教官を務め、1886年には文部省の依頼で『小学画手本』14冊を編纂しました。

美術界での活動

1889年、岡倉天心やアーネスト・フェノロサらが日本美術の革新を目指して洋画を排斥する東京美術学校を設立した際、本多は小山正太郎、浅井忠らと共に、対抗する形で明治美術会を設立しました。この動きは、当時の美術界における洋画と日本画の対立を象徴する出来事でした。

造園家としての活動

本多は日本庭園の造園にも情熱を注ぎ、『図解庭造法』を著しました。この著作は、ジョサイア・コンドルが日本の風景庭園に関する著書を執筆する際の参考にもなりました。本多は茶道にも精通しており、『茶室構造法 茶道要訣』などの著作も残しています。

1897年から1918年にかけて、八幡公園（佐世保市）、龍頭山公園（釜山）、西公園（福岡市）、清流公園（北九州市）など、41もの庭園を設計しました。

晩年と遺産

1908年には、物故洋画家の追悼祭を催し、『洋風美術家小伝 追弔記念』を編纂しました。1921年、東京で70歳で亡くなり、品川の東海寺世尊殿裏に埋葬されました。1933年には、小川芋銭ら門下生によって泉岳寺に顕彰碑が建てられましたが、後に寺の改修計画に伴い、檀家墓地内に保管されることになりました。

本多錦吉郎は、洋画、風刺漫画、造園という多岐にわたる分野で才能を発揮し、明治期の日本美術界に大きな足跡を残しました。特に、西洋美術の知識を日本に導入し、後進の育成に尽力した功績は高く評価されています。

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