本所奉行

本所奉行とは

本所奉行は、江戸幕府における役職の一つで、現在の東京都墨田区本所地区および江東区深川地区にあたる、江戸東郊の本所を管轄していました。定員は2名で、通常は書院番・小姓番からそれぞれ1名が出役していました。

役割

本所奉行は、本所の民政、道路、橋、水路などを管理し、住民に上下水道の維持や、水路の出入り口である圦樋（いりひ）の修理、樋戸（ひのと）の開閉の見回りなどを請け負わせていました。本所の地域住民の生活を支える重要な役割を担っていました。

成立の背景

明暦の大火後、隅田川に両国橋が架けられ、竪川や横川などの水路の構築が進むにつれて、それまで江戸の範囲に含まれていなかった隅田川の東側にも市街地が拡大しました。このような状況に対応するため、万治3年3月25日（1660年5月4日）に、書院番の徳山重政と山崎重政の両名が「本所宅地并に溝渠の奉行」に任ぜられました。これが本所奉行の始まりとされています。

廃止と復活

本所奉行は、貞享2年（1685年）に一旦廃止されましたが、元禄6年8月16日（1693年9月15日）もしくは18日に、藤堂良明と多賀常之が任命され、復活しました。しかし、その後、正徳3年閏5月11日（1713年7月3日）に本所の町並地が町奉行に移管され、続いて享保4年4月3日（1719年5月21日）には武家地が普請奉行、道路・橋・水路が勘定奉行に移管され、本所奉行は再び廃止されました。

廃止後

本所奉行の廃止後、一般行政や住民に請け負わせていた事業の管理は、町奉行所に設置された「本所見廻」が担当することになりました。

本所奉行をモチーフにした作品

本所奉行をモチーフにした時代劇として、「破れ奉行」があります。作中では「深川奉行」として登場します。

本所奉行は、短期間ではありましたが、江戸の都市構造の変化に対応するために設置され、本所の発展に貢献した役職でした。

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