本教寺 (南砺市)

本教寺（ほんきょうじ）

富山県南砺市、かつての平村にあたる中畑地区に位置する本教寺は、真宗大谷派に属する寺院です。

五箇山における真宗の広まりと道場の起源

室町時代も後半に差し掛かる文明年間、本願寺第八世である蓮如上人が越前国吉崎御坊に滞在したことは、北陸地方に真宗門徒が急速に増加する契機となりました。この動きは五箇山地方にも及び、真宗の教えが本格的に広がり始めます。五箇山で最初に布教を進めたのは、越前国の和田本覚寺でした。中畑にあった道場を含め、五箇山西部に位置する寺院のほとんどは、元々この本覚寺を本山とする道場としてその歴史を刻み始めます。

本教寺に伝わる由緒によれば、蓮如上人の弟子とされる法親坊が布教のために中畑の地を訪れた際、助右衛門という人物の家に宿り、近隣の村人たちに教えを説いたことが、この道場の始まりであったとされています。一方、歴史的な記録としては、天文21年（1552年）10月27日付の「五箇山十日講起請文」の中に、「中畠兵衛」と「中畠太郎左衛門尉」という二名の署名が見られます。これらの人物が、当時の中心的な中畑道場坊であったと考えられています。

当初、道場坊は兵衛の子孫である助右衛門家と、太郎左衛門尉の子孫である太郎右衛門家が、月ごとに交代で務める体制がとられていたようです。しかし、最終的には助右衛門家を受け継ぐ広井氏が、代々中畑道場坊を担う定位置となったと伝えられています。

共有道場から独立へ

創建当初の中畑道場は、中畑村だけでなく、隣接する見座村も共有する形態をとっていました。これは本尊である阿弥陀如来木像に記された銘文からも裏付けられます。その銘文には、「明和九年二月二十八日　本覚寺下越中国砺波郡（見座村　中畑村）総道場」と明確に記されており、両村にとって共通の信仰の場であったことがわかります。

江戸時代中期、享和元年（1801年）になると、見座村に見座道場（後の見覚寺）が新たに建てられ、中畑道場から独立しました。この独立に際しては、見座道場が大太鼓を持ち出し、中畑道場には本尊が残されたという伝承が今日まで語り継がれています。

本堂の歴史と寺号の公称

現在の本堂についても口承が残されており、それによれば享保年間（1716年～1736年）に改築されたと伝えられています。この改築は、井波の大工である角兵衛が京都の大谷御坊を小さくした形で図面を引き、その弟子が建設を手がけたとされています。ただし、明治の初めに建てられたとする異説も存在します。

その後、昭和38年（1963年）には本堂の屋根の葺替工事が行われ、現在に至っています。そして、昭和24年（1949年）4月4日には、浄土真宗本願寺派より正式に「本教寺」の寺号を許され、これ以降、「中畑本教寺」としてその名を称するようになりました。

五箇山における本覚寺下の系譜

先に触れたように、本教寺は越前国和田本覚寺を起源とする道場として発展してきました。五箇山地方に存在する真宗寺院の多くも同様で、元々は本覚寺下道場として成立しました。戦国時代を経て、本願寺が東西に分派した際、これらの本覚寺下道場も東方の小松本覚寺と、西方の鳥羽野万法寺のいずれかに分かれ、その流れが現代の各寺院に引き継がれています。本教寺は、五箇山に根付いた真宗信仰の歴史と、地域社会における信仰拠点の変遷を示す貴重な存在と言えます。

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