本朝月令

本朝月令について



本朝月令(ほんちょうがつりょう)は、平安時代中期に成立した年中行事に関する公事書であり、現在まで伝わる最も古い資料の一つです。この書物は、明法博士である惟宗公方によって編纂されました。著者は、律令制度に基づく政治や文化に関心を持ち、父である惟宗直本は『令集解』の著者、また孫は『政事要略』の著者であることから、学問の流れを受け継いだ家系に位置しています。

本書は全4巻から成り立っていますが、現存しているのは第2巻の4月から6月に関する部分のみです。この内容の特徴は、著者自身の見解を記述するのではなく、律令制度や国史に関する文献、さらには和漢の典籍に依拠して記述されている点です。特に、古代の文献からの引用は非常に忠実であり、このために本書は平安時代における有職故実の研究にとどまらず、失われた文献の復元にも役立つ貴重な資料とされています。

特に重要な点として、本書の編纂方針は後の『政事要略』に大きな影響を与えていることが挙げられます。『政事要略』の年中行事篇は本書を基に構成されており、さらに国史に関する部分には『類聚国史』を参照しています。そのため、『政事要略』における年中行事の記述は、六国史からの引用とともに『類聚国史』に基づく情報を含む多様性を感じさせます。

本書の成立時期の特定には、2つの手掛かりが存在します。第一に、六月同日国忌事条に記載された「贈皇后藤原氏。諱胤子。先帝之妣」という記述があります。ここに登場する藤原胤子宇多天皇女御であり、後に醍醐天皇の母となります。「先帝」が醍醐天皇を指していることから、次代の天皇である朱雀天皇の時代に成立したと解釈されます。第二に、本書に引用されている典籍の中には、他の文献に記載されていないものもあり、その一つが『清凉記』です。この文献は天慶9年(946年)に成立したため、本書の編纂はその前であることが示唆されています。このため、本書は朱雀天皇朝の時代に成立したものと捉えられることが一般的ですが、延喜年間や村上天皇朝に成立したとの説も存在します。

本書の写本は鎌倉時代に書写されたものが複数伝わっており、代表的なものとしては九条家旧蔵本と金沢文庫旧蔵本があります。後者は建武年間頃に抄出され、現在は尊経閣文庫所蔵です。また、近世にも本書の写本が存在しますが、これらは九条家旧蔵本の系統に属しているとされています。

出版情報


本朝月令は多くの研究資料として重宝されており、関連する刊本には群書類従本公事部があり、清水潔による新校本が皇學館大学神道研究所から出版されています。さらに、多数の研究文献が存在し、清水潔の「本朝月令と政事要略の編纂」や林真木雄の「『本朝月令』の典拠について」などが特に著名です。これらの研究を通じて、本書の内容や意義がさらに深く理解されることを目指しています。

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