本浄院

本浄院について

本浄院（ほんじょういん）は、江戸時代初期に生きた女性で、加藤清正の長女として知られています。生年は慶長3年（1598年）で、母は側室の浄光院であり、彼女は加藤家2代の忠広と徳川頼宣に結びつく八十姫の姉でもあります。彼女の人生は、当時の歴史的背景や家族関係に深く根ざしていたのです。

出生と早期の結婚

本浄院は、慶長の役において清正に同行して朝鮮に渡った際、母浄光院の懐妊によって誕生しました。1598年11月には日本へ帰国する途中、ある島で生まれたとされています。興味深いことに、出産時に海女によって取り上げられたため、清正は彼女に「あま」という名を与えました。また、別の説では「古屋」とも呼ばれることがあったようです。

清正の在世中、彼女は9歳の時に館林城主榊原康政の嫡男康勝と結婚し、熊本から館林への輿入れが行われました。この慶事は『当代記』にその華やかな様子が記録されているほどでした。しかし、康勝は1615年の大坂夏の陣あとの病により亡くなり、彼女は実家の加藤家に戻ります。その後、彼女は大坂城代阿部正次の嫡男政澄に再婚しました。

晩年と死去

本浄院は寛永4年（1627年）に、後の老中阿部正能を生むものの、30歳の若さでこの世を去ります。彼女の墓は池上本門寺の阿部家墓地にあり、母浄光院の墓と隣接して建てられています。現在の墓は、彼女の33回忌にあたる万治2年（1659年）に、子の阿部正能によって再建されたものです。法名は「本浄院日昌神尼」とされています。

本浄院の実名に関する議論

本浄院の実名に関しては「古屋」と「アマ」という二つの説があります。「古屋」の説は、江戸後期に編纂された榊原系譜によるもので、そこには彼女が「康勝室（古屋）」と記載されています。ただし、この系譜は彼女の名前が確実に「古屋」であったことを証明するものではなく、時代が下ったものです。

一方で、「あま」説は、最近発見されたいくつかの史料に基づいています。特に、加藤家に関わる重臣の家系譜には清正の娘であるあま姫の誕生と命名の由来が記されており、慶長3年に生まれたこととも一致します。また、加藤忠広の歌日記の中には、彼女が「あま」と呼ばれていたことが伝えられています。こうした証拠から、彼女の実名が「あま」であった可能性が高いとされています。

本浄院の存在は江戸時代の女性の歴史を探る上で重要な意味を持ち、その生涯や家族関係は、当時の社会や文化を知る手掛かりとなるでしょう。

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