本田創造

本田創造(1924-2001)氏は、日本のアメリカ史研究において重要な役割を果たした歴史家です。大阪市に生まれ、東京大学経済学部卒業後、一橋大学経済研究所にて研究活動を開始しました。都留重人氏や小原敬士氏といった著名な教授陣の下で研鑽を積み、助手を経て助教授、教授へと昇進。その後、神戸大学文学部助教授を経て、再び一橋大学社会学部教授の職に就きました。

1988年には一橋大学を定年退官し、名誉教授の称号を授与されました。同年に桜美林大学教授として教壇に立ち、その後、学長補佐、副学長と要職を歴任しました。2001年、虚血性心不全のため逝去されました。

本田氏の専門はアメリカ社会経済史、特に黒人史研究に深い関心を寄せていました。数々の著作を残しており、その中でも代表的なものとして、『アメリカ南部奴隷制社会の経済構造』(岩波書店, 1964年)、『アメリカ黒人の歴史』(岩波新書, 1964年)、『アメリカ社会と黒人：黒人問題の歴史的省察』(大月書店, 1972年)などが挙げられます。これらの著作は、アメリカ社会における黒人問題を多角的に分析し、歴史的視点からの考察を深めています。

また、フレデリック・ダグラスの自伝を分かりやすく解説した『私は黒人奴隷だった：フレデリック・ダグラスの物語』(岩波ジュニア新書, 1987年)は、児童書ながら高い評価を受け、第35回サンケイ児童出版文化賞を受賞しました。これは、専門的な知識を分かりやすく一般に伝える、本田氏の力量の高さを示す一例と言えます。

さらに、共著や編著書も多く残しており、『アメリカ資本主義の成立と展開』（都留重人氏、宮野啓二氏と共編、岩波書店、1974年）、『アメリカ社会史の世界』（編、三省堂、1989年）なども重要な業績です。翻訳にも携わっており、K.C.ホイーア氏の『リンカン：その生涯と思想』（小原敬士氏と共訳、岩波新書、1957年）、ジョン・ホープ・フランクリン氏の『人種と歴史：黒人歴史家のみたアメリカ社会』（監訳、岩波書店、1993年）などを手掛けています。これらの活動を通じて、アメリカ史研究、特に黒人問題に関する研究と理解の普及に大きく貢献しました。

本田氏は多くの優れた研究者を育成したことでも知られています。土肥恒之氏（一橋大学名誉教授）、竹中興慈氏（東北大学名誉教授）、辻内鏡人氏（元一橋大学教授）、中野聡氏（一橋大学学長）、佐藤千登勢氏（筑波大学教授）、上杉忍氏（横浜市立大学名誉教授）、大森一輝氏（北海学園大学教授）、廣瀬直己氏（元東京電力ホールディングス社長）など、各界で活躍する人材を輩出しました。これらの事実は、本田氏の指導力と人材育成への貢献がいかに大きかったかを物語っています。

本田創造氏の研究と教育活動は、日本のアメリカ史研究に大きな足跡を残しました。彼の著作は、今日においてもアメリカ史研究の重要な参考文献として活用されており、その功績は長く記憶されることでしょう。彼の逝去後も、本田創造追悼文集編集委員会編『毅然として：本田創造追悼文集』(2001年)が刊行され、多方面からの追悼の念が寄せられています。

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