本部泰

本部泰（もとべ やすし / ゆたか）

幕末の鳥取藩士から明治の内務官僚へ

本部泰は、天保14年（1843年）に鳥取藩士・本部平之丞元旦の嗣子として因幡国邑美郡馬場町（現在の鳥取県鳥取市馬場町）に生まれました。初名は勇之介。幕末の動乱期には鳥取藩士として活動し、文久2年（1861年）には旗本幌組、慶応元年（1866年）には調練世話役を務めました。

本圀寺事件と報復

文久3年（1863年）に発生した本圀寺事件では、義理の叔父である黒部権之助らが暗殺され、その報復として慶応2年（1866年）に黒部の遺族らが出雲国手結浦で暗殺者の一部を襲撃した事件に参加し、閉門処分を受けました。その後、慶応3年（1867年）に赦免されています。この事件は、本部泰の人生における転換点の一つとなりました。

明治政府での活躍

明治維新後、本部泰は明治政府に出仕し、地方官僚として活躍しました。明治3年（1870年）には鳥取藩の大監察・大属となり、その後、鳥取県六等警部、西南戦争では陸軍省出仕・新撰旅団付として出征しました。その後も、邑美・法美・岩井郡長、鳥取県少書記官、福井県少書記官、同大書記官、同書記官、宮城県書記官、京都府書記官などを歴任し、1897年に退官しました。これらの地方官僚としての経験は、後の愛媛県知事としての活動に大きく影響を与えました。

愛媛県知事としての実績

退官後、本部泰は1899年に結成された帝国党に参加し、1900年には第2次山縣内閣により愛媛県知事に登用されました。愛媛県知事としては、県政の中心を土木・教育・勧業に置き、継続土木事業の延長、新しい十カ年継続土木事業計画の立案、県立商業学校などの開設、農事試験場・水産試験場・工業試験場の新設などを推進し、愛媛県の発展に大きく貢献しました。

知事退任後

1904年に知事を休職した後、本部泰は帰郷し、武徳殿や因伯尚徳会演舞場で剣術や弓術の指導を行いました。これらの活動を通じて、地域社会の教育や文化の向上に尽力しました。

栄典

本部泰は、その功績により、以下の栄典を授与されています。

1897年（明治30年）8月20日 - 正五位
1901年（明治34年）6月27日 - 勲四等瑞宝章

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
『愛媛県史 人物』愛媛県史編纂委員会、1989年。
家臣人名事典編纂委員会『三百藩家臣人名事典 5』新人物往来社 1988年。

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