杉 (松型駆逐艦)

日本海軍駆逐艦「杉」：激動の艦歴

1944年8月25日、日本海軍の駆逐艦「杉」は藤永田造船所で竣工しました。本艦は松型駆逐艦の7番艦であり、艦名としては2代目となります。竣工後は瀬戸内海西部を拠点に、第十一水雷戦隊所属として訓練に励みました。しかし、平穏な日々は長くは続かず、10月、捷一号作戦の発動に伴い、小沢機動部隊に編入されることになります。

レイテ沖海戦と燃料不足

10月20日、小沢機動部隊は内海西部から出撃。しかし、「杉」は燃料不足という深刻な問題に直面。僚艦「桐」と共に作戦行動から離脱し、10月25日のレイテ沖海戦には参加できませんでした。この燃料不足は、作戦の成否に大きな影響を与えただけでなく、多くの乗組員の生命をも危険に晒すことになります。

帰投後は第三十一戦隊と共に第四航空戦隊を護衛し、南西方面へと進出しました。11月15日からは第52駆逐隊に所属。マニラを経由し、12月には第八次多号作戦に参加しますが、この作戦で小破という痛手を負います。さらに、12月下旬には礼号作戦にも参加しました。

連続する戦闘と損傷

1945年1月21日、台湾高雄港において、米軍機動部隊艦上機の空襲を受け、再び損傷しました。3月中旬からは呉で修理が行われ、その後は内海西部で待機。終戦後には復員輸送に従事しました。

台湾海軍への移籍と解体

戦後、日本海軍の「杉」は国府海軍（後の台湾海軍）に引き渡され、「恵陽（フェイヤン）」と改名されました。しかし、同型艦と比較して状態は悪く、再武装されることなく、1949年の国共内戦時には上海から台湾への移動中に淡水で座礁。そのまま修理されることなく、1951年に除籍、解体されました。

建造から練習部隊への配属

「杉」は当初、仮称艦名5487号艦として1944年2月25日に起工されました。6月5日には正式に「杉」と命名され、「槇」「樅」と共に松型駆逐艦に類別されました。7月3日に進水し、菊池敏隆少佐が艤装員長に任命されます。8月25日の竣工と同時に、菊池少佐が初代艦長に就任しました。

その後、第十一水雷戦隊に編入され、軽巡洋艦「多摩」を旗艦として、瀬戸内海西部で訓練を行いました。この期間には、弾薬輸送や人員輸送といった任務にも従事しました。特に、10月16日には「秋月」と共に呉を出港。しかし、僚艦「涼月」がアメリカ潜水艦の攻撃を受け損傷したため、予定を変更して「涼月」への物資移載等を行うこととなります。捷一号作戦発動直前の出来事でした。

捷一号作戦とエンガノ岬沖海戦への不参加

捷一号作戦において「杉」は、小沢機動部隊の護衛として参加。10月20日、空母4隻、航空戦艦2隻を基幹とする小沢機動部隊は豊後水道を出撃しました。しかし、「杉」は燃料不足により僚艦「桐」と共に作戦から離脱。エンガノ岬沖海戦には参加せず、高雄、奄美大島を経て呉に帰投しました。一方、同時期、第十一水雷戦隊所属の軽巡洋艦「多摩」はアメリカ潜水艦に撃沈されました。

南西方面作戦と多号作戦

南西方面作戦では、第三十一戦隊に編入。第四航空戦隊の護衛任務に就き、マニラや南沙諸島などを経由しました。12月には、レイテ島への輸送作戦である多号作戦に参加し、この際に空襲を受け損傷します。乗組員にも多くの死傷者が出ました。

礼号作戦と終戦

マニラ空襲後、損傷した「杉」はミンドロ島への攻撃作戦である礼号作戦に参加。作戦中、空襲によりレーダーなどが使用不能となり、さらに損傷を負いましたが、乗員の戦死者は出ませんでした。その後、終戦を呉で迎えました。

参考文献

この記述は、以下の文献を参考に作成されています。（具体的な文献名は省略）

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