敷香町

敷香町（しすかちょう）とは

敷香町は、かつて日本の領有下にあった樺太に存在した町です。現在のロシア連邦サハリン州ポロナイスク市の一部にあたりますが、両者の領域は完全に一致するわけではありません。敷香町は、南樺太北部の中心都市の一つであり、支庁所在地でもありました。

名称について

敷香の読み方には諸説あり、「しすか」や「しきか」などが用いられてきました。近年までNHKラジオ第2放送の気象通報では「しすか」と呼ばれていましたが、内務省の告示では「しくか」とされていました。この地名は、アイヌ語の「シシ・トゥカリ（sis-tukari）」（山のふもと）や、ニヴフ語の「シッカ（S'ikka）」に由来すると考えられています。

軍事上の重要性

日本の領有下において、敷香町は国境に面していたため、軍事上重要な地域とみなされていました。1938年には、国境から7キロメートル手前に警部補派出所が設置され、事実上の国境警備拠点となっていました。また、1938年1月には、女優の岡田嘉子が作家の杉本良吉とともに、同地を警官隊慰問の名目で訪れ、そのままソ連へ入国するという事件も発生しています。

第二次世界大戦の影響

第二次世界大戦中、敷香町には陸軍部隊が駐屯し、上敷香には海軍の飛行場も存在していました。1945年8月にはソ連軍が侵攻し、日本軍との間で激しい戦闘が繰り広げられました。敷香は日本軍の戦闘指揮所が置かれましたが、ソ連軍の侵攻に伴い、8月17日には上敷香に緊急疎開命令が出され、住民は避難を開始しました。その際、上敷香市街は日本軍によって焼き払われ、その後、ソ連軍機による空襲も受け、2,500戸が全焼しました。敷香からの避難も始まりましたが、各地からの避難民で混雑し、混乱を極めたとされています。厚生省の資料によると、敷香の住民の死者は約70人とされています。

地理的特徴

敷香町は、敷香支庁管内の最北に位置し、当時は日本最北の町でした。北端は国境である北緯50度線でした。町内には、ウィルタやニヴフなどの先住民族が多く居住しており、オタスには樺太で唯一の先住民族のための学校がありました。幌内低地にはツンドラ地帯が広がり、幌内川が流れています。幌内川は北緯50度以北に源を発し、多来加湾に注ぐ大河で、当時は日本唯一の国際河川と呼ばれていました。また、多来加湖は当時国内3位の広さを持つ湖沼でした。

歴史

敷香町の歴史は、1915年（大正4年）の敷香村、多来可村、遠岸村の発足に始まります。1923年に多来可村と遠岸村が敷香村に合併し、1929年には敷香村が二級町村として発足、1930年に町制を施行し敷香町となりました。1933年には一級町村となっています。1936年には、樺太鉄道の知取駅から敷香駅間が開業しました。1943年には内地に編入されましたが、1945年8月22日にソ連によって占拠され、1949年6月1日に樺太庁が廃止されるとともに、敷香町も廃止となりました。

町内の地域区分

敷香町は、旧多来可村地域、旧遠岸村地域などに分かれていました。

教育

1945年4月1日現在、敷香町には多くの国民学校と中等学校がありました。

国民学校
樺太公立敷香第一国民学校
樺太公立敷香第二国民学校
樺太公立敷香第三国民学校
樺太公立上敷香国民学校
樺太公立中敷香第一国民学校
樺太公立中敷香第二国民学校
樺太公立気屯国民学校
古屯分教場
樺太公立中気屯国民学校
樺太公立幌内国民学校
樺太公立千輪国民学校
樺太公立大和国民学校
樺太公立保恵国民学校
樺太公立初問第一国民学校
樺太公立初問第二国民学校
樺太公立大木国民学校
樺太公立駒問国民学校

中等学校
樺太庁敷香中学校
樺太公立敷香高等女学校
樺太公立敷香商業学校
樺太公立敷香農業学校

交通

敷香町には鉄道が通っており、樺太東線が主要な路線でした。また、三井鉱山内川炭鉱軌道や樺太セメント工業石灰山軌道も存在しました。

鉄道省樺太鉄道局
樺太東線：（内路村） - 敷香駅 - 中敷香駅 - 江須駅 - 上敷香駅 - 大木駅 - 初問駅 - 保恵駅 - 千輪駅 - 亜屯駅 - 気屯駅 - 古屯駅
三井鉱山内川炭鉱軌道：敷香駅 - 中敷香駅 - 内川駅
樺太セメント工業石灰山軌道：古屯駅 - 雁門駅 - 西山駅

ゆかりの人物

敷香町出身の著名人には、以下の人物がいます。
大鵬幸喜（元横綱・元相撲部屋親方）
北川源太郎（ダーヒンニェニ・ゲンダーヌ＝ウィルタ民族）
花守信吉（白瀬矗南極探検隊隊員、アイヌ文化伝承者）
大塚陽子（歌人）

参考文献

N・ヴィシネフスキー『トナカイ王-北方先住民族のサハリン史』小山内道子訳、成文社、2006年
全国樺太連盟編『樺太沿革・行政史』、1978年
中山隆志 『一九四五年夏 最後の日ソ戦』 中公文庫、2001年。
防衛庁防衛研修所戦史室編『北東方面陸軍作戦（２）-千島・樺太・北海道の防衛』朝雲新聞社〈戦史叢書〉、1978年

関連項目

樺太庁の廃止市町村一覧

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