杉田博明

杉田 博明

日本のジャーナリスト、随筆家として知られる杉田博明氏（1935年1月9日生まれ、2017年12月13日没）。長年にわたり京都の文化と社会を見つめ、その深い知見を多くの著作として後世に残しました。

経歴

京都府に生まれ、地元の同志社大学を卒業。大学卒業後、京都新聞社に入社し、ジャーナリストとしての道を歩み始めました。社では編集委員を務めるなど、要職を歴任。新聞記者として日々の取材活動を行う傍ら、個人的な探求心を基に、京都の豊かな歴史や文化、芸術に関する執筆活動を展開しました。

著作活動

杉田氏の著作は、主に京都を舞台とした文学、美術、歴史、人物などに焦点を当てています。その筆致は、ジャーナリストとしての鋭い視点と、随筆家としての温かく細やかな感性を併せ持っており、専門的な知識を分かりやすく、かつ魅力的に読者に伝えることに長けていました。

特に、特定のテーマや人物に深く切り込んだ著作が多く見られます。例えば、京都の歴史や文化遺産を「歩く」という視点から紹介するスタイルは、『源氏物語を歩く』や共著による「〇〇を歩く」シリーズに典型的に現れており、読者を歴史散策へといざないます。

また、京都にゆかりのある人物に光を当てた評伝も重要な位置を占めます。祇園の文化を象徴する文芸芸妓、磯田多佳の生涯を描いた『祇園の女 文芸芸妓磯田多佳』は、その人間的な魅力や当時の社会背景を丹念に描き出し、広く読まれました。京焼の巨匠、青木木米の芸術と生涯に迫った『京焼の名工・青木木米の生涯』（新潮選書）は、美術史的な考察と人間ドラマを融合させた一冊として評価されています。さらに、『近代京都を生きた人々 明治人物誌』では、明治期の京都を舞台に活躍した様々な人々の姿を活写し、近代京都の息吹を伝えています。

日々の暮らしに根ざした京都の文化や風習に触れた随筆集『京の口うら』は、地元新聞社から刊行され、京都人の日常や隠れた魅力を紹介する作品となっています。

主な著書

『源氏物語を歩く』 光風社出版 1986年（新版1994年）
『近代京都を生きた人々 明治人物誌』 京都書院 1987年
『祇園の女 文芸芸妓磯田多佳』 新潮社 1991年（中公文庫 2001年）
『京の口うら』 京都新聞社 1995年
『京焼の名工・青木木米の生涯』 新潮選書 2001年

主な共著

『京都道元禅師を歩く』 百瀬明治共編著/西山治朗写真 京都新聞社 1999年
『京の花街祇園』 溝縁ひろし写真 淡交社「新撰京の魅力」2003年
『能百番を歩く』（上下） 三浦隆夫共著 京都新聞出版センター 2004年
『先斗町のすべて 決定版』 溝縁ひろし写真/先斗町歌舞会監修 淡交社 2010年
『慈悲の人 瑩山禅師を歩く』 百瀬明治・粟津征二郎共著/西山治朗写真 学研パブリッシング 2014年

杉田博明氏の著作は、ジャーナリストとして培われた確かな取材力と、京都への深い愛情に裏打ちされており、その後の京都文化研究や歴史散策の重要な手がかりとなっています。その多岐にわたる執筆活動は、京都の魅力を広く国内外に伝える上で多大な貢献を果たしました。

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