青木木米

青木木米：京焼と文人画の巨匠

青木木米は、江戸時代の京焼を代表する陶工であり、同時に文人画にも優れた才能を発揮した稀有な芸術家でした。1767年、京都に生まれ、幼少期から才能を開花させます。書を学び、やがて陶芸の世界へと足を踏み入れます。

若き日の木米は、木村蒹葭堂の書庫で『陶説』と出会い、作陶への強い意志を固めます。奥田頴川に師事し、30歳を機に粟田口で自身の窯を開きます。高い技術と独創的なデザインで、たちまち評判となり、やがて加賀藩前田家から招聘され、衰退しつつあった加賀九谷焼の復興に尽力しました。その後、粟田御所の御用窯も務めるなど、京焼界における地位を確立しました。

木米の作品は煎茶器が中心でしたが、白磁、青磁、赤絵、染付、交趾など、その作域は非常に広範に渡ります。特に中国古陶磁への深い造詣は、彼の作品に独特の風格を与えています。中国古陶磁の写しを基盤としながらも、木米自身の感性と技術が融合することで、独自の境地を開拓したのです。

陶工としての木米は、窯の温度を火の出すパチパチという音で判断していました。その結果、耳は常に炎症を起こし、聴力は徐々に衰えていきました。それでも木米は作陶を続け、晩年には聴力を失い、「聾米」と号するようになりました。その情熱は、並々ならぬものだったと言えるでしょう。

絵画においても、木米は文人画（南画）の伝統を踏襲しながらも、独自の表現を追求しました。水墨画から彩色画まで、その画風は多様で、力強い筆致と繊細な描写が見事に調和しています。

永樂保全、仁阿弥道八とともに、京焼の幕末三名人と称えられる木米。その作品は、現在でも高く評価されており、多くの美術館や博物館に所蔵されています。代表作には、『騰龍図』『兎道朝暾図』『山水図』など、重要文化財に指定されている作品も多数あります。これらの作品からは、木米の卓越した技術と芸術性、そして深い精神性が伝わってきます。

木米の作品は、単なる日用品ではなく、芸術作品として、また当時の文化や社会状況を反映した歴史的資料としても、貴重な存在です。彼の生涯と作品は、私たちに江戸時代の美術や文化、そして人間の情熱と執念を伝えてくれる、貴重な遺産と言えるでしょう。

代表作

騰龍図（個人蔵、重要文化財）
兎道朝暾図（個人蔵、重要文化財、東京国立博物館蔵）
山水図（所在不明、重要文化財、個人蔵）
渓山幽居図（出光美術館）
百子文瓢形瓶（逸翁美術館）
詩文煎茶碗（東京国立博物館）
龍濤文瓜形水注（京都府蔵・京都文化博物館管理）
詩文四方茶壷（東京国立博物館）
七香文茗碗（京都国立博物館）
紫交趾釉荒磯文急須（京都国立博物館）
煎茶道具一式（東京国立博物館）
白泥鬼面文涼炉（京都国立博物館）
染付龍濤図提重（東京国立博物館、重要文化財）
金欄手百仙図輪花鉢
三島手急須（京都国立博物館）
青磁の花瓶（大）（東京医科歯科大学、重要文化財）

これらの作品を通して、青木木米の芸術世界に触れ、その魅力を再発見することができるでしょう。

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