杉谷昭子

杉谷昭子（すぎたに しょうこ、1943年2月25日 - 2019年5月8日）は、日本の著名なピアノ奏者です。本姓は岡田。和歌山県和歌山市に生まれ、音楽の道を志しました。

東京芸術大学で学んだ後、さらなる研鑽を積むためドイツへ渡り、1976年にケルン音楽大学大学院を修了しました。国内外の多くの著名な指導者から薫陶を受け、その中には矢田暎子、井口秋子といった国内の先達から、デートレフ・クラウス、エリーザ・ハンゼン、さらにはブルーノ・レオナルド・ゲルバー、アレクシス・ワイセンベルク、クラウディオ・アラウといった世界的な巨匠たちが名を連ねています。

旧西ドイツでの演奏家国家試験において、ブラームスのピアノ協奏曲第1番の演奏が1等賞を受賞し、その才能が注目されました。この演奏がきっかけとなり、大手マネージャーの目に留まり、ドイツのデュッセルドルフで華々しいデビューを飾ることとなりました。

国際的なコンクールでも輝かしい成績を収めました。1971年にはエッセンフォルクヴァングコンクールで優勝を果たし、翌1972年にはマリア・カナルス国際コンクールで2位に入賞。この年にはミラノ音楽祭にも出演しています。1973年にはヴィオッティ国際音楽コンクールで銀賞を獲得するなど、若くしてその実力を世界に示しました。

演奏活動は日本とドイツを中心に精力的に行われました。著名なヴァイオリニストである海野義雄氏と共にベートーヴェン・ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会を開催したほか、ドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス室内楽定期演奏会には常連として招聘されました。さらに、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のトップメンバーと各地で室内楽演奏会を展開するなど、多岐にわたる活動で多くの識者の注目を集め続けました。

国内外で多くのCDをリリースしており、ユニバーサルミュージックからはベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全集が発売されています。また、ポリグラムからリリースされた「カタリ・カタリ」は、現在もなおロングセラーを続けています。

演奏活動と並行して、ピアノ教育家としても重要な役割を果たしました。クララ・シューマン国際ピアノコンクール（デュッセルドルフ）では、マルタ・アルゲリッチ、アレクシス・ワイセンベルク、ウラディーミル・アシュケナジーといった世界的なピアニストたちと共に審査員を務めるなど、その指導力と見識は高く評価されました。

故郷である和歌山県からもその功績が認められ、平成17年度（2005年）に和歌山文化賞を受賞しました。

2010年には、音楽教育への熱意からヨーロッパ・ピアノ協会を設立しました。近年、コンクールにおいて若年化と超絶技巧偏重の傾向が見られる中で、杉谷氏はこれとは一線を画し、音楽性の豊かさや円熟度を重視する理念に基づいた「ヨーロッパ国際ピアノコンクール in Japan」を創設しました。このコンクールは、真に音楽を深く追求する才能を発掘・育成することを目的としています。

杉谷昭子氏は、国際的なピアニストとして、また優れた教育者、そして音楽振興への貢献者として、日本の音楽界に多大な足跡を残しました。2019年5月8日に76歳で逝去しましたが、その功績は多くの人々に記憶されています。

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