ヴィオッティ国際音楽コンクール

イタリア北部に位置する歴史ある都市ヴェルチェッリで開催されるヴィオッティ国際音楽コンクール（The Gian Battista Viotti International Music Competition）。この国際的な音楽の祭典は、1950年にヴァイオリニストのヨゼフ・ロッボーネ氏の発案により誕生しました。

コンクールの名称は、18世紀から19世紀にかけて活躍したイタリアの著名な作曲家でありヴァイオリニストでもあったジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティに敬意を表して名付けられています。創設から数年を経た1957年には、世界各国の主要な音楽コンクールが加盟する権威ある組織、国際音楽コンクール連盟への参加を果たしました。

開催される部門は時代のニーズや状況に応じて多様に変化してきました。初期にはピアノ、声楽、ヴァイオリン、室内楽といった主要分野に加え、オーボエ、ギター、ダンス、作曲など非常に幅広いジャンルを扱っていました。しかし、部門構成は固定されておらず、常に見直しが行われています。特に作曲部門は1990年を最後に長期間中断されていましたが、2006年から3年間のみ限定的に再開されました。

2009年以降は、運営上の理由から、ピアノと声楽（主にオペラのアリア）の2部門が隔年で交互に開催される形式に変更されています。このコンクールは、その長い歴史の中で数々の才能を発掘してきました。指揮者のクラウディオ・アバド、テノール歌手のルチアーノ・パヴァロッティ、ソプラノ歌手のミレッラ・フレーニ、ヴァイオリニストのサルヴァトーレ・アッカルド、ピアニスト兼指揮者のダニエル・バレンボイム、バリトン歌手のレナート・ブルゾン、ピアニストのソフィア・ソロヴィー、ソプラノ歌手のスミ・ジョーなど、国際的に著名な音楽家たちがこのコンクールをキャリアの重要なステップとしています。

賞の授与方法も変化しています。かつては最終選考に残った参加者全員に対し、成績に応じて金・銀・銅のメダルが授与されていましたが、現在ではメダルの授与は行われず、代わりに様々な種類の特別賞や副賞が贈られています。

運営面でも変更が見られます。以前は同一年度に複数の部門を同時に開催することも可能でしたが、財政的な制約などから、現在では年に一つの部門のみを実施する体制に移行しました。また、2010年度以降は、予備審査の効率化や円滑な進行を図るため、参加希望者に演奏を収録したDVDの提出が義務付けられています。

年齢制限に関しても、このコンクールは歴史的に先駆的な取り組みを行ってきました。国際的な音楽コンクールとしては比較的早期に「参加年齢の下限を設けない」という方針を導入したことで知られています。ただし、全ての部門でこの方針が維持されているわけではありません。現在、声楽部門では18歳から35歳までといった具体的な年齢の上限と下限が設定されています。一方、ピアノ部門では、31歳未満という上限のみが適用されており、下限は設けられていません。

コンクールの歴史における最年少記録としては、2002年のピアノ部門で優勝したソン・ヨルム氏が最年少優勝者として特筆されます。また、ダニエル・バレンボイム氏は審査員の好意により「特別大賞」が与えられ、これがコンクール史上最年少の受賞記録とされています。

部門ごとの審査内容にも特徴があります。声楽部門の審査は、参加者が指定されたオペラ・アリアを6曲準備するという、明確な課題に基づいて行われます。この部門の受賞者には、若手芸術家育成を目的とした「パヴァロッティ・奨学金」の受給資格が得られる道も開かれています。ピアノ部門の審査においては、20世紀に作曲された音楽作品と、ベートーヴェンが作曲した選定されたピアノ・ソナタの全楽章が必須の課題曲とされており、幅広い時代と様式の理解と高い演奏能力が求められます。

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