杉野孫七

杉野孫七の生涯と業績

杉野 孫七（すぎの まごしち、生年1867年1月24日）は、日本の海軍軍人であり、日露戦争での広瀬武夫との関係で記憶されています。彼の人生は、海軍への情熱と戦争の厳しさを物語るものです。

来歴と初期の活動

三重県の磯山村に生まれた杉野は、農家の長男として育ちました。彼は代用教員や巡査、監守として地道に働いた後、1886年に海軍水兵としての道を選びます。初めは二等水兵として浦賀屯営に入隊し、その後「日進」や「筑波」といった艦船に乗り込みました。

1891年にはフランスに渡り、「松島」回航委員付としての経験を積みます。日清戦争においては第五号水雷艇で活躍し、功績により勲八等白色桐葉章を授与されました。忙しい海軍生活の中、彼は着実に階級を上げ、最終的には一等兵曹に昇進します。1903年に朝日に乗り込んだ際には、時の水雷長であった広瀬武夫と親しい関係を築きました。二人は共に多くの時間を過ごし、固い絆で結ばれていました。

日露戦争と旅順港閉塞作戦

1904年の日露戦争では、杉野は広瀬武夫の指揮する閉塞船・福井丸の指揮官附として任務に従事しました。特に印象的な出来事は、旅順口閉塞作戦における福井丸の沈没です。船が接近する際、敵の水雷が命中し、船は瞬時に沈没。広瀬は乗組員を救おうと試みましたが、杉野の行方は分からなくなってしまいました。広瀬が自身も命を犠牲にしたことで、杉野の不在は一層深刻なものとなりました。彼らは共に戦場での運命を共にしたのです。

杉野はその後、広瀬とともに顕彰され、軍功により昇進し文部省の唱歌にも名を残しました。戦後、彼と広瀬の業績を讃える銅像が東京の万世橋駅の前に建てられるなど、多くのひとに尊敬されています。

生存説と続報

杉野の死体は発見されなかったため、彼の生存説が浮上しました。特に満州に住む日本人の間での噂が絶えず、甘粕正彦の特務機関に所属していたという説も浮き上がるほどでした。1946年から1947年には新聞やニュースで「杉野兵曹長生存」の報道がされ、爆発後に漂流して助けられたという話が広まりました。しかし、この後の具体的な証拠は見つかっておらず、単なる噂に過ぎないと考えられています。

家族と遺言

杉野には妻の杉野りうや息子たちがいました。彼は亡くなる前に、「自分が死んだら子供の一人を広瀬少佐に預け、海軍軍人にしてほしい」との遺言を残しました。長男の修一は父の遺志を受け継ぎ、海軍に入隊。最終的には戦艦長門の艦長を務め、階級は大佐となりました。

次男の健次もまた海軍大佐、三男の寿男も海軍としての道を選びました。杉野孫七の人生は、ただの軍人の物語にとどまらず、彼の精神や教えは次世代へと受け継がれているのです。彼の存在は、海軍の歴史に刻まれた意義深いものとして今も語り継がれています。

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