李元吉

李元吉（り げんきつ）

李元吉は、唐の初代皇帝である高祖・李淵の四男として、激動の時代を生きた人物です。斉王に封じられましたが、その短い生涯は、権力争いと悲劇に彩られました。

生涯

李元吉は、仁寿3年（603年）に李淵と竇夫人の間に生まれました。大業13年（617年）に李淵が隋に対して挙兵すると、彼は太原の留守を任され、斉国公に封じられました。李淵が帝位に就くと斉王に進みましたが、武徳2年（619年）には劉武周の侵攻により太原を失い、李淵から厳しく譴責されることとなります。

その後、李元吉は襄州道行台尚書令などの要職を歴任しました。武徳4年（621年）には、次兄である秦王・李世民が王世充の拠る東都を包囲した際、竇建徳の来援に対して、李世民自らが竇建徳を迎え撃ち、李元吉と屈突通が東都の守りを固めました。王世充が手薄と見て出兵すると、李元吉は伏兵を用いてこれを撃退し、功績を挙げました。

しかし、李世民の功績が大きくなるにつれて、長兄の皇太子・李建成は自身の地位が脅かされることを恐れ、李元吉と結託して李世民を陥れようとします。彼らは讒言や謀殺を企てましたが、いずれも失敗に終わりました。

武徳9年（626年）、李元吉は左衛大将軍に転じ、司徒に進みました。突厥が国境を侵犯した際、李建成は李元吉を北伐の名目で推薦し、その兵力を使って兵変を起こそうとしました。しかし、李建成と李元吉が宮廷に向かう途中、玄武門において李世民の兵に襲撃され、李建成は射殺され、李元吉も尉遅敬徳によって殺害されました。この事件は、玄武門の変として知られています。

貞観初年に李元吉は改葬され、海陵郡王に改封されました。その後、巣王に改封され、曹王李明が後を継ぎました。

家族

李元吉には、妻の楊氏との間に多くの子がいました。

梁王 李承業
漁陽王 李承鸞
普安王 李承奨
江夏王 李承裕
義陽王 李承度

しかし、彼らは後に李世民によって処刑されました。娘たちの中には、名門の家に嫁いだ者もいます。

和静県主（薛収の子の薛元超に降嫁）
寿春県主（楊豫之（楊雄の子の楊師道の子）に降嫁）
文安県主（段儼（段文振の子の段綸の子）に降嫁）
新野県主 李令（裴重暉に降嫁）
帰仁県主（姜謩に降嫁）

人物・逸話

李元吉は、生まれた時に容貌が醜かったため、母に嫌われて侍女が養育したという逸話が残っています。また、少年時代には奴隷や婦妾を駆り立てて戦争ごっこを行い、死傷者が出るほどであったとも伝えられています。狩猟を好み、民家に出没して淫行を重ねるなど、素行の悪さが目立ったようです。宇文歆がその行いを諫めたものの聞き入れられず、李淵に報告されたという逸話も残っています。

一方で、槍術に優れており、尉遅敬徳と槍術の腕を競ったというエピソードも存在します。

伝記資料

李元吉に関する記述は、『旧唐書』巻64 列伝第14「巣王元吉伝」や『新唐書』巻79 列伝第4「巣王元吉伝」に詳しいです。これらの資料から、彼の生涯や人物像を知ることができます。

李元吉は、唐朝の成立という歴史の転換期に生きた人物であり、その短い生涯は、権力争いの激しさや、時代の波に翻弄される人々の姿を象徴していると言えるでしょう。

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