劉武周

劉武周（りゅう ぶしゅう）

劉武周は、隋末から唐初にかけて活躍した群雄の一人です。その生涯は激動に満ち、隋の将から独立勢力の首領、そして悲劇的な最期を迎えるまで、波瀾万丈でした。

生い立ちと隋への仕官

劉武周は、瀛州景城県（現在の河北省滄州市滄県の西部）で劉匡の子として生まれました。父の代に雲州馬邑県に移り住み、若い頃から騎射に優れ、多くの豪傑と交友関係を持ちました。兄の劉山伯は、その交友関係を危惧し、一族の滅亡を警告したと伝えられています。

武周は洛陽に出て、隋の太僕である楊義臣の麾下に入りました。高句麗遠征に従軍し、その功績により建節校尉に任じられました。馬邑に帰還後は、鷹揚府校尉となります。馬邑郡太守の王仁恭に重用されますが、王仁恭の侍女との密通を恐れた武周は、民衆を扇動して王仁恭を殺害し、挙兵するに至ります。

独立と勢力拡大

大業13年（617年）、劉武周は「父老や妻子が飢えと寒さに苦しみ、遺体が散乱しているのに、王府君は官倉を閉ざして百姓を救おうとしない。これに何の理があろうか」と馬邑郡中に宣言し、張万歳らとともに王仁恭を斬り、官倉を開放して食糧を分け与え、民衆の支持を得ました。馬邑郡の属県に檄を飛ばし、兵1万あまりを集めると、自ら馬邑郡太守を名乗り、突厥に遣使して臣従しました。

雁門郡丞の陳孝意と虎賁郎将の王智弁が桑乾鎮を包囲すると、武周は突厥と合流して王智弁を撃破し、雁門を制圧。さらに楼煩を襲撃して破り、隋の離宮である汾陽宮を占拠すると、女官を突厥の始畢可汗に献上して軍馬と交換し、定襄郡も制圧しました。突厥は武周を定楊可汗に任じ、武周は皇帝を称し、妻の沮氏を皇后に立て、天興と改元しました。

唐との戦いと敗北

武周は、衛士の楊伏念を左僕射、妹婿の苑君璋を内史令に任じました。また、竇建徳に敗れて逃れてきた宋金剛を宋王に封じ、妹を娶らせました。宋金剛は武周に晋陽を攻略して天下を争うように進言し、武周は宋金剛を西南道大行台に任じました。

天興3年（619年）、突厥の協力も得て総勢2万の兵を率いて唐の北辺に進攻しました。太原を守る斉王の李元吉は、派遣に反対する張達を送りましたが、撃破され、張達は武周に寝返って楡次を落としました。武周軍は石州と介州も抜き、太原を包囲しました。援軍として来た唐の裴寂は宋金剛に包囲され大敗。李元吉を退却させ、武周は太原に入城しました。宋金剛は晋州を攻め落とし、劉弘基を捕え、澮州に進軍しました。夏県の呂崇茂が県令を殺して魏王を号し、武周に呼応しました。また、隋の河東の守将である王行本も武周と連合しました。并州を制圧した武周は、首都を馬邑から太原に移しました。

唐の高祖李淵は、秦王李世民に兵を率いさせて柏壁に駐屯させました。唐の永安王李孝基らが呂崇茂を攻撃すると、宋金剛は尉遅恭と尋相を派遣して李孝基の軍を破り、四将を捕らえました。しかし、尉遅恭は美良川で李世民に敗れ、王行本も蒲州で敗れました。宋金剛は絳州を囲み、武周は汾州を攻めましたが、勝てませんでした。補給路の護衛を担当していた黄子英が唐の張徳政に攻撃されて敗死したことで宋金剛の軍が食糧不足となり撤退を開始。李世民は追撃して雀鼠谷で大勝し、宋金剛は介州に逃れました。唐軍が迫ると、宋金剛は残軍2万を率いて決戦に臨むも敗北し、軽騎で逃走。尉遅恭らは唐に降伏しました。武周は太原を捨てて突厥に逃れました。

突厥での最期

宋金剛は突厥に叛いて上谷に帰ろうとしましたが、追っ手に斬られました。武周もまた馬邑に帰ろうとした計画が露見し、突厥の軍隊によって殺害されました。享年49歳でした。

伝記資料

『旧唐書』巻55 列伝第5「劉武周伝」
『新唐書』巻86 列伝第11「劉武周伝」

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