李広

李広（り こう）

李広は、前漢の武将。紀元前2世紀に文帝、景帝、武帝の三代に仕え、「飛将軍」の異名で匈奴に恐れられた人物です。しかし、その優れた武勇にも関わらず、不遇な生涯を送り、最後は自ら命を絶ちました。

生涯

飛将軍

紀元前166年、匈奴征伐の功績により郎となり、文帝の側近として仕えました。狩猟の際に猛獣を仕留める武勇を見せ、文帝から「高祖の時代に生まれていれば一万戸の侯にもなれただろう」と賞賛されました。

景帝の時代には、呉楚七国の乱の鎮圧で功績を挙げましたが、梁王の将軍であったため、漢からの恩賞は受けられませんでした。その後、上谷太守、上郡太守などを歴任し、匈奴に対する防衛の最前線で活躍。少数で大軍を退けるなど、その武勇は匈奴に「飛将軍」として恐れられました。

悲運の将

武帝の時代には、衛尉に昇進。馬邑での匈奴誘引作戦に従軍しますが、功績を挙げることはできませんでした。紀元前129年には、匈奴との戦いで捕虜となるも脱出。しかし、罪に問われ平民に落とされてしまいます。

その後、右北平太守に復帰し、郎中令に遷りますが、匈奴との戦いでは、なかなか戦果を挙げられませんでした。紀元前119年の匈奴戦役では、高齢を理由に出陣を反対されますが、猛抗議の末に参戦。しかし、大将軍の衛青によって、予備部隊に配置換えを命じられます。李広はこれに不満を抱きながらも従いますが、道に迷い、戦いに遅参してしまいます。

衛青から遅参の理由を問いただされた李広は、「私は成人してから匈奴と七十数回も戦ってきた。今回、大将軍に従い単于と戦える機会を得たのに、後方の部隊に回され道に迷ったのは天命であろう」と嘆き、自刎しました。彼の死は、多くの人々に悲しみを与えたと伝えられています。

李広の子孫

李広の死後、彼の家族にも不幸が続きました。末子の李敢は、父の死の原因を作ったとして衛青を恨みましたが、衛青の甥である霍去病に射殺されました。李広の孫である李陵は、匈奴に降伏したため、一族は処刑され、彼を擁護した司馬遷も宮刑に処されました。

逸話

桃李言わざれども下自ずから蹊を成す

李広は、部下を大切にする清廉な人物でした。司馬遷は、彼のそのような人柄を「桃李言わざれども下自ずから蹊を成す」と評しました。これは、徳のある人の下には自然と人が集まるという意味です。

虎と見て石に立つ矢のためしあり

李広は、虎に似た石を射たところ、矢が深く突き刺さったという逸話があります。しかし、石と気づいてからは、矢が立たなくなったと伝えられています。この逸話は、精神集中や信念の重要性を示唆するものとして語り継がれています。

李広の影響

李広は、その武勇と悲劇的な生涯から、後世の文学や芸術に大きな影響を与えました。彼の故事に由来する言葉や、彼を題材とした作品は数多く存在します。例えば水滸伝の花栄は小李広と呼ばれています。

家族

李当戸 - 長男
李椒 - 次男
李敢 - 末子
李陵 - 李当戸の末子
李禹 - 李敢の嫡子

脚注

関連項目

呂布
* 花栄 - 水滸伝の登場人物で弓の名手。「小李広」と渾名された。

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