李文 (高陽伯)

李文（り ぶん、生年不詳 - 1489年）は、明代中期の軍人であり、その出自はチベットに遡ります。彼は、李英の甥という縁故から軍人としての道を歩み始めました。

宣徳年間、李文は陝西行都司都指揮僉事に任じられました。この頃、チベット人の思俄可が他部族の良馬を盗む事件が発生しました。都指揮の穆粛は、この件で馬を取り戻そうとしましたが、失敗に終わります。その後、思俄可が辺境で家畜を売っていたところ、穆粛は彼を盗人として誣告し、逮捕、収監した結果、思俄可は獄中で命を落としてしまいます。この一件はチベット人たちを激怒させ、反乱計画へと発展しました。しかし、李文は穆粛の不正を弾劾し、逮捕させ、法吏に引き渡すことで、西辺での動乱を未然に防ぎました。この功績により、李文は都指揮使へと昇進しました。

1457年（天順元年）1月、李文は英宗の復辟を支援した功績により、都督僉事に昇進しました。さらに同年2月には、右都督として大同に派遣され、駐屯することになりました。敵軍が2000騎余りで威遠を侵犯した際には、李文は自ら軍を率いてこれを撃破しました。その功績が認められ、同年7月、高陽伯に封じられました。しかし、1460年（天順4年）2月、奪門の変の功労者であった石亨が獄死し、他の功労者たちの官職が剥奪されることになると、李文は自ら罪を申し出ました。しかし、英宗は李文が長年辺境を守ってきた功績を考慮し、不問に付しました。

その年の秋、ボライが大規模な侵攻を開始しましたが、李文は兵を擁しながらも戦いませんでした。ボライは雁門を突破し、忻州や代州で大規模な略奪を行いました。ボライが撤退すると、李文は北京に召還され、投獄され、斬刑を宣告されました。しかし、英宗は李文の命を救い、爵位を剥奪して都督僉事に降格させ、延綏での功績を立てることを命じました。1470年（成化6年）には、都督同知に昇進しました。

1473年（成化9年）、ハミ衛の忠順王家がトルファンの速檀阿力の侵攻を受け、主城を占拠され、王母が捕らえられたため、明朝に救援を求めました。李文は成化帝の命を受け、右通政の劉文と共に甘粛に向かい、事態の収拾にあたることになりました。1474年（成化10年）、李文は哈密都督の罕慎や赤斤、罕東、メクリンなどの諸部の兵を集め、ハミの救援に向かいました。李文らは卜隆吉川で阿力と対峙しました。しかし、トルファンの別部が罕東・赤斤を攻撃する動きを見せたため、李文は二衛の兵を本土に帰還させました。さらに、罕慎とメクリン、ウイグルの兵も撤退したため、李文も粛州に引き返しました。1489年（弘治2年）12月壬子、李文は亡くなりました。1508年（正徳3年）6月、高陽伯の位が追贈されました。

李文の生涯は、その初期の功績と後半生の苦難が対照的です。彼は、辺境の安定に貢献し、一時は高い地位を得ましたが、政治的な混乱の中で失脚を経験しました。しかし、その後も辺境での任務を果たし、その功績が後世に認められ、最終的に名誉を回復しました。この事実は、彼が単なる武将としてだけでなく、複雑な政治状況の中で生き抜いた人物であったことを示しています。

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