奪門の変

奪門の変

奪門の変（だつもんのへん）は、1457年2月11日に明で発生したクーデター事件です。この事件は、上皇であった英宗が、弟である景泰帝から帝位を奪還し、再び皇帝の座に就いたという、明の歴史において特異な出来事として知られています。

事件の背景

事件の発端は、1449年の土木の変にまで遡ります。この戦いで、明の皇帝であった英宗はオイラト軍に捕らえられ、捕虜となってしまいました。国を率いる皇帝が不在となった明では、英宗の弟である景泰帝が即位し、国政を担うことになりました。しかし、後に英宗は明に帰還を果たしたものの、帝位を退いた身となり、軟禁状態に置かれることになったのです。

この状況に不満を抱いていた英宗は、側近の石亨、徐有貞、曹吉祥らと密かに連携し、帝位奪還のための計画を練りました。彼らは、景泰帝が病に伏せっている隙を突き、偽のタタール軍来襲の情報を流布し、夜間に都の各門を制圧しました。そして、英宗は再び帝位に就き、天順帝として即位を宣言しました。

事件後の影響

このクーデターによって、景泰帝を支持していた勢力は徹底的に排除されました。特に、于謙、王文、太監王誠などの重臣が処刑されるなど、政界は大きな混乱に見舞われました。また、病床にあった景泰帝も幽閉され、その直後に病状が悪化して崩御しました。この景泰帝の死については暗殺説も囁かれています。

奪門の変は、明の政治に大きな影響を与えただけでなく、周辺諸国にも影響を及ぼしました。特に、朝鮮では、首陽大君（後の世祖）が王位を簒奪した事件と関連付けられることがあります。この事件の結果、端宗は世祖に譲位させられ、さらに廃位されて魯山君に降格し、最後は薬殺刑に処せられるという悲劇的な結末を迎えました。

まとめ

奪門の変は、明の皇帝であった英宗が、弟の景泰帝から帝位を奪還するという、異例の事態でした。この事件は、明の歴史において権力闘争の激しさを物語る事件であり、その後の政治情勢に大きな影響を与えました。また、周辺国への影響も無視できず、東アジアの歴史を語る上で重要な事件の一つと言えるでしょう。

関連事項

英宗 (明)
重祚

もう一度検索