李王世子暗殺未遂事件

李王世子暗殺未遂事件

李王世子暗殺未遂事件は、1920年4月に東京で発生した重要な歴史的事件です。この事件は、当時の大韓帝国の皇族である李王家の王太子、李垠に対する暗殺計画によって引き起こされました。李垠は日本で生活しており、この年、梨本宮守正王の長女である方子女王との結婚が決定していました。しかし、この結婚を巡っては、朝鮮独立運動家たちの反発があり、事態は緊迫の度を増していました。

事件の背景

李王家は、日本による韓国併合後、皇帝の地位を奪われたものの、王公族として日本の皇族に準じた待遇を受けることになりました。李垠が日本に留学中に、明治天皇から李王世子に封じられ、その後も日本での生活を続けました。1920年4月に行われる結婚は、当時の朝鮮の独立運動にとって「障害」と見なされ、多くの反発を招いていました。たとえば、1916年の婚約以来、独立運動家たちは梨本宮家に対して嫌がらせを行っていたのです。このような状況から、李垠と方子女王の結婚を妨害しようとする動きが激化していました。

暗殺計画の発端

朝鮮独立運動家の徐相漢は、李王世子夫妻の結婚を知ると、それを「朝鮮独立の障害」と考えました。徐は、自らが耕していた独立運動の理念を守るために、李垠夫妻を暗殺する計画を練り始めました。彼は、「空気銃で雀を取る」と称しながら、硝酸カリウムや硫黄を用いて火薬を製造する準備を進めました。

計画が発覚

ある日、神田西神田警察署の巡査が知人の朝鮮人から徐相漢が火薬を作っているという噂を聞きつけました。この情報をもとに、内偵を行った結果、徐の行動にいくつかの疑わしい点が浮かび上がりました。警視庁は徐相漢を迅速に逮捕し、この計画を未然に防ぐことに成功しました。

結果と影響

徐相漢は、自作の火薬をブリキ缶に詰めて爆弾を製造し、李王世子夫妻と朝鮮総督・斎藤実を暗殺する計画を立てていました。そのため、警視庁の迅速な対応がなければ、悲劇的な結果をもたらしていたことでしょう。この事件は、朝鮮独立運動の過激さを象徴するものとして記憶されています。そして、同時に日本の治安機関の活動の重要性をも浮き彫りにしました。

参考文献

この事件に関する詳細は、警視庁が編纂した『警視庁史（第2）』に記されています。これにより、当時の社会情勢や警察の動きについての理解が深まります。

この暗殺未遂事件は、日本と朝鮮半島の歴史を語る上で欠かせない出来事であり、国際関係や民族意識の変遷を考察するための重要な素材となります。

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