李皇后 (北魏文成帝)

李皇后（りこうごう）は、北魏の文成帝の貴人（側室）であり、献文帝の母。皇后として追尊されました。彼女の生涯は、美貌と運命に翻弄された悲劇的なものでした。

生い立ちと北魏への連行

李皇后は、南朝宋の済陰郡太守であった李方叔の娘として生まれました。彼女は幼い頃からずば抜けた美貌を持っており、その評判は遠くまで届いていました。450年、北魏の永昌王である拓跋仁が寿春に侵攻した際、李氏の家にも兵が押し寄せ、彼女は捕らえられて北魏へと連行されることとなりました。

宮廷での出会いと出産

連行された後、李氏は軍隊の中で護軍の李洪之と出会い、親交を深めます。二人は義兄弟の契りを結び、互いを支え合いました。453年、拓跋仁が長安で処刑されると、李氏はその家族とともに平城の宮殿に送られました。そこで彼女は文成帝に見出されます。文成帝は高楼から李氏の姿を見て、周囲の者に彼女の美しさを尋ねました。皆が美しいと答えたため、文成帝は李氏を寵愛するようになり、やがて彼女は文成帝の子を身ごもります。そして、拓跋弘（後の献文帝）を出産し、貴人の位を受けました。

「子貴母死」の慣習と最期

しかし、李皇后の幸せは長くは続きませんでした。北魏には「子貴母死」という、皇子が即位した場合、その生母は権力を持つことを防ぐために処刑されるという残酷な慣習が存在しました。456年、李氏はその慣習に従い、処刑されることとなります。死を前にして、彼女は義兄弟である李洪之との面会を願い、南方にいる実の兄弟たちの名前を挙げながら、号泣し、地団駄を踏んで悲しんだと伝えられています。

死後の追尊

李皇后は、その死後、元皇后と諡され、金陵に葬られました。彼女の短い生涯は、美貌ゆえに翻弄され、時代の犠牲となった女性の悲劇を物語っています。

伝記資料

『魏書』巻13 列伝第1
『北史』巻13 列伝第1

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