李進熙

李進熙（イ・ジンヒ）

李進熙（り じんひ、イ・ジンヒ、韓: 이진희、1929年 - 2012年4月15日）は、在日韓国人の歴史研究者・著述家であり、和光大学名誉教授を務めました。文学博士（明治大学）。専門は考古学、古代史、日朝関係史。

略歴

1929年：慶尚南道で生まれる。
1948年：在日本朝鮮人連盟水戸支部内の小学校臨時教師、のち朝鮮聯盟茨城中央小学校で教師
1950年：明治大学入学、土浦第一小学校非常勤講師を兼務。
1955年：朝鮮高校の時間講師となる。
1957年：明治大学大学院修士課程修了、朝鮮高校の専任講師となる。
1961年：朝鮮大学校 (日本)|朝鮮大学校_(日本)の講師（考古学、朝鮮古代史）となる。
1971年：朝鮮大学校を退職。
1984年：韓国籍を取得。
1994年：和光大学人文学部教授に就任。
2003年：和光大学を定年退職、名誉教授となる。
2003年：韓国政府より国民褒章「牡丹章」を受章。
2012年：肺がんのため死去。

活動

朝鮮大学校を去った後、季刊誌『日本の中の朝鮮文化』の編集に携わり、その後『三千里』『青丘』で編集長を務めました。古代史を題材にした独自の歴史解釈による著作で知られ、司馬遼太郎、松本清張、金達寿ら歴史作家との対談を通じて、その言論活動は社会に大きな影響を与えました。

1974年には、朴正熙政権に反対するデモを起こした大学生らが拘束された「民青学連事件」に抗議し、金達寿、鶴見俊輔、針生一郎らと共にハンガー・ストライキを行いました。

日朝関係の研究促進を目的とした韓国文化研究振興財団（後の韓哲文化財団）の設立にも尽力し、設立時には常務理事を務めました。

歴史論争

李進熙の研究は、歴史小説的な側面を持つ一方で、実証的な考古学の立場からは批判を受けることもありました。特に以下の説は大きな議論を呼びました。

好太王碑文改竄説
広開土王碑文が日本軍部によって改竄されたとする説。しかし、原石拓本の発見により改竄の事実は否定され、逆に朝鮮・韓国の学者の読み替えが批判されることとなりました。
江田船山古墳出土大刀主体者百済王説
江田船山古墳から出土した銀象嵌銘大刀の主体者を百済の蓋鹵王と解釈し、九州が韓国の領土であったと主張。しかし、一般的には大刀銘の主体者は獲加多支鹵大王（倭王武、雄略天皇）とする説が主流です。

著作

李進熙は数多くの著作を著しており、主なものとして以下が挙げられます。

『朝鮮歴史年表』（朴慶植と共編）
『広開土王陵碑の研究』
『好太王碑の謎 日本古代史を書きかえる』
『日本文化と朝鮮』
『江戸時代の朝鮮通信使』
『日朝交流史』（姜在彦と共著）
『海峡 ある在日史学者の半生』
『好太王碑研究とその後』
* 『渡来文化のうねり―古代の朝鮮と日本』



李進熙は、在日韓国人としての視点から、日本と朝鮮半島の歴史と文化交流について独自の考察を展開し、多くの議論を呼びました。その研究は、日朝関係史研究に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

その他

1996年のペルー日本大使公邸占拠事件では、長男が人質となり、解放されるまで苦悩の日々を送りました。

妻はエッセイストの呉文子であり、義父は日本で初めて北朝鮮の実情を告発した関貴星です。

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