李雄 (成漢)

李雄（りゆう）：成漢初代皇帝、その生涯と業績

李雄（274年 - 334年）は、五胡十六国時代の成漢を建国した初代皇帝です。字は仲儁。父は成漢の基礎を築いた李特、母は羅氏。彼の生涯は、戦乱の時代を生き抜き、新たな国を築き上げる波乱に満ちたものでした。

生い立ちと頭角を現すまで

李雄は、巴氐族（巴賨族）の出身で、現在の甘粛省秦安県東南にあたる略陽郡臨渭県の出身です。身長が八尺三寸（約190cm）もあったとされ、容姿端麗で若い頃から大胆な性格で知られていました。故郷では人々の面倒をよく見ていたため、多くの人々から信頼されていました。

道術士の劉化は李雄を高く評価し、「関隴の士はいずれ皆南方へと移住するであろう。李氏の子では仲儁だけが非凡であり、模範となる人物である。最期には人主に至るであろう」と予言したと伝えられています。

父の李特が数万の流民を率いて益州（蜀）に移ると、李雄もこれに従いました。301年、李特が益州刺史の羅尚との対立から自立を宣言すると、李雄は前将軍に任じられます。302年には、西晋の討伐軍を兄の李蕩と共に撃破する大勝利を収めました。303年には成都を占拠し、建初と改元して自立を宣言しました。

しかし、食糧不足から李特が流民を各地に分散させることを決定すると、李雄は集落の離反を警戒しましたが聞き入れられませんでした。その結果、羅尚の総攻撃により李特が戦死するという事態に見舞われます。

李特の死後、李雄は叔父の李流や兄の李蕩と共に兵をまとめましたが、羅尚軍の追撃を受け、兄の李蕩も戦死してしまいます。叔父の李流が西晋への降伏を考えた際には、李雄は強く反対し、李離と共に孫阜の軍を奇襲して大勝利を収めました。この功績により、李流から軍事面の決裁を任されるようになります。

303年9月、李流が病死すると、遺言により李雄が後継者に指名され、君主となりました。李雄は大都督・大将軍・益州牧を自称し、郫城を都と定めました。

成漢の建国と勢力拡大

君主となった李雄は、配下の朴泰に偽装投降を命じ、羅尚軍を欺いて郫城を攻撃させ、大混乱の中で勝利を収めました。その後、成都を制圧し、304年10月には成都王を号して領内に大赦を下し、建興と改元しました。

李雄は西晋の法を廃止し、簡略化した法を定め、叔父の李驤を太傅に、兄の李始を太保に任じるなど、官僚制度を整備しました。また、道教の教祖である范長生を丞相に任じ、敬意を払いました。

306年6月、范長生の勧めを受け、李雄は皇帝の位を称し、大赦を下して晏平と改元、国号を『大成』と定めました。父の李特を景帝と追尊し、范長生には天地太師の称号を加えました。

建国後、李雄は勢力拡大に尽力します。西晋の南夷校尉李毅への討伐軍を派遣したほか、秦州の流民からの救援要請に応じ、西晋軍を撃退しました。その後、策略を用いて梓潼を奪還し、310年には羅尚の死に乗じて巴西も奪還しました。314年には、梁州を荒らしていた流民が降伏し、漢嘉・涪陵・漢中が成の支配下に入りました。

晩年と皇太子擁立

323年、前趙に帰順していた仇池の楊難敵が李雄に降伏しました。しかし、李雄の配下が楊難敵から賄賂を受け取り、帰還させたことから、楊難敵は再び背き、李雄は討伐軍を派遣しますが大敗を喫しました。

324年、李雄は李蕩の子である李班を皇太子に立てようとしました。群臣は反対しましたが、李雄は「李班は仁孝なる性格で学問を好み、必ずや名君となる器である」と主張し、李班を皇太子に立てました。

前涼との修好

326年、前涼の張駿から東晋に称藩するよう勧められましたが、李雄は丁重に断りました。その後も張駿とは友好的な関係を築き、使者を往来させました。中原の混乱を見て、東晋と天下を分けようと持ちかけたこともありました。

南中平定と最期

330年、李寿に巴東攻略を命じ、巴東を陥落させました。333年には寧州を平定し、南中の地を併呑しました。334年6月、李雄は病に倒れ、61歳で亡くなりました。武皇帝と諡され、廟号は太宗、墓号は安都陵とされました。

業績と評価

李雄は、私情に囚われず賢人を愛し、才能に応じて人材を登用しました。刑罰や法令を寛容簡潔にし、学校を建設して文化の交流にも励みました。税を軽減し、労役を減らしたため、民は農業に励み、生活は安定しました。その結果、遠方からも人々が移り住み、益州は平安を取り戻しました。

しかし、成漢は儀礼や品位が定まっておらず、爵位や俸禄が明確ではなく、軍事面でも規律が緩い面がありました。

人物

李雄は、瑞祥に彩られた逸話が残されています。母の羅氏が見た夢や、14カ月かけて生まれたことなどが伝えられています。また、母の死後、巫覡の言葉を信じて禁令を設けたり、埋葬を拒んだりするなど、迷信的な一面もありました。

まとめ

李雄は、五胡十六国時代の混乱期に、卓越したリーダーシップを発揮して成漢を建国し、蜀の地を安定させた名君でした。その功績は、後世に長く語り継がれています。

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