材木問屋

材木問屋とは

材木問屋とは、木材を専門に取り扱う問屋のことです。時代とともに「木材問屋」という名称も用いられるようになりました。日本の木材流通において重要な役割を果たしてきた材木問屋の歴史と機能について解説します。

材木問屋の歴史

日本の木材流通は平安時代にまで遡ります。鎌倉時代になると、木材の主要な生産地、集積地、消費地などに「材木問丸」と呼ばれる問丸が登場しました。これらの問丸は同業者でまとまり、「材木座（木屋座）」という座を結成することもありました。

近世的な材木問屋が登場するきっかけとなったのは、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての大規模な城郭や城下町の建設ラッシュです。これにより木材需要が急増し、木材商から事業を拡大して巨万の富を築く豪商も現れました。その代表例が、現在の価値にして100兆円以上の財産を築いたとされる淀屋です。

江戸の材木問屋

江戸の材木問屋は、江戸城建設のために集められた材木商人が起源です。当初は、板材木問屋、熊野問屋、川辺問屋（炭薪問屋）、木場材木問屋の4つのグループが存在していました。

これらの材木商は江戸の都市拡大とともに分散しましたが、元禄14年（1701年）頃に深川木場に集められました。その後、宝永年間に板材木問屋と熊野材木問屋が合併して板材木熊野問屋となり、延享年間に川辺問屋のほとんどが木場材木問屋に加入したことで（木炭・薪のみを扱う小規模問屋を除く）、最終的に板材木熊野問屋と木場材木問屋の2つに集約され、木場に材木問屋街が形成されました。

江戸の材木問屋の特徴は、小売を扱えなかったことです。延宝元年（1673年）に材木問屋の代金支払いに関する訴訟が起こり、江戸幕府は、生産地の荷主と直接取引する材木問屋と、材木問屋から一定の手数料（約3-5％）を支払って現物を買い取り、小売商や消費者に直接販売する材木仲買を分離するよう命じました。

川辺問屋が木場材木問屋に合流したのも、元々は木炭や薪を扱っていた川辺問屋が、小型の角材や丸太の買い付け・販売にまで進出したことが、延宝年間の規定に違反するとみなされたためです。

問屋と仲買の分離

問屋と仲買の分離は、江戸独自の事情によるものでした。大坂で同様の措置が取られたのは約80年後の宝暦年間であり、その他の地域では中世以来、産地での買い付け（場合によっては山林の手配も含む）、加工、運搬、小売販売までを手掛ける業者が多く存在しました。

明治時代以降、材木問屋を巡る規制の多くは緩和・撤廃され、輸入材の取り扱いも開始されましたが、材木問屋（または木材問屋）自体は今日まで存続しているものも少なくありません。

現代の材木問屋

現代においても、材木問屋は木材の安定供給と品質管理において重要な役割を果たしています。建築様式の変化や木材需要の多様化に対応しながら、日本の森林資源の有効活用と持続可能な社会の実現に貢献しています。

参考文献

脇田晴子「材木問丸」/所三男「材木問屋」（『国史大辞典 6』吉川弘文館、1985年 ISBN 978-4-642-00505-0）
伊藤好一「材木問屋」（『日本史大事典 3』平凡社、1993年 ISBN 978-4-582-13103-1）

外部リンク

* 東京木材問屋協同組合

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