村山等安

村山等安：長崎代官として生きた波乱の生涯

村山等安（むらやま とうあん）は、生年不詳ながら、安土桃山時代末期から江戸時代初期にかけて長崎で代官を務めた人物です。その出自は尾張、安芸、博多など諸説ありますが、正確なところはわかっていません。

長崎での台頭

天正年間（1573-1592年）に長崎に流れ着いた等安は、その才覚と弁舌の巧みさ、そしてポルトガル語の知識を活かし、町衆の一員として頭角を現します。豪商・末次興善らの支援を受け、呂宋壺（ルソン壺）の貿易で莫大な財産を築き上げました。また、イエズス会に入信し、「アントン」という洗礼名を得ています。

代官への道

文禄元年（1592年）、豊臣秀吉に謁見した等安は、長崎の地子銀を納める代わりに、直轄地を預かる長崎代官の地位を願い出て許可されます。秀吉は彼の洗礼名にちなみ「等安」という名を与え、以後、彼はこの名で知られるようになります。秀吉の死後も、等安は外町（内町以外の地域）の代官として支配を続けました。

慶長9年（1604年）には、徳川家康に謁見し、長崎代官の地位を追認されます。その後、呂宋壺に加え、生糸、印子、金、鉛、水銀などの貿易を手掛け、薩摩藩や佐賀藩に融資するほどの財力を蓄えました。また、元和2年（1616年）には、次男の村山秋安を司令官とする船団を台湾に派遣しましたが、これは暴風のため失敗に終わっています。

権力闘争と最期

しかし、等安の晩年は波乱に満ちたものでした。長崎の指導者層や新興商人との対立が激化し、特に末次平蔵らとの間で、内町対外町、イエズス会対托鉢修道会、ポルトガル対スペインといった権力争いが繰り広げられました。

アビラ・ヒロンの『日本王国記』によると、等安は多くの妾を持ち、妻子との不和、さらには多くの人々を殺害したとされています。長崎奉行・長谷川藤広の仲裁で一時的に息子らと和解したものの、根本的な問題は解決しませんでした。

元和4年（1618年）には、末次平蔵の訴えにより、等安はキリシタンを擁護したこと、そして大坂の豊臣氏と通じたという嫌疑をかけられました。元和5年（1619年）、等安は江戸で斬首刑に処され、一族も長崎で処刑されました。彼の死後、長崎代官の地位は末次平蔵政直が引き継ぎました。

等安が豊臣氏と通じたとされる嫌疑は、大坂夏の陣の際に、息子の一人が浪人を率いて大坂城に武器や弾薬を運び込んだこと、また三男のフランシスコ等安が流罪を逃れ豊臣方に加担したことなどが挙げられます。これらの情報は、等安の料理人であった三九郎によって末次平蔵政直に伝えられたとされています。三九郎は、自分の娘が等安に殺害されたことを恨み、政直に密告したと言われています。

まとめ

村山等安は、長崎の地で一代を築き上げた人物です。貿易で莫大な富を築き、長崎代官として権勢を誇りましたが、その一方で、多くの対立と陰謀に巻き込まれ、最後は悲劇的な最期を遂げました。彼の生涯は、当時の長崎における国際的な貿易と、それに伴う権力闘争の激しさを物語る上で、重要な事例と言えるでしょう。

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