村松玲子

村松玲子（むらまつ れいこ）氏は、日本の著名な合唱指揮者です。岩手県盛岡市で生まれ、岩手県立盛岡第二高等学校を経て、東京学芸大学教育学部特別教科（音楽）教員養成課程を卒業されました。

1990年、岩手県立不来方高等学校に教諭として着任し、同校の音楽部を長年にわたり指揮・指導されました。その指導力は非常に高く、全日本合唱コンクール全国大会において、2022年までに通算22回の金賞、最高賞である文部科学大臣賞を8回受賞するという輝かしい実績を誇ります。特に、14大会連続で金賞を受賞するという偉業を達成しており、その指導力がいかに優れているかが伺えます。また、声楽アンサンブルコンテスト全国大会でも1位を獲得するなど、合唱だけでなく、声楽アンサンブルの指導においても高い能力を発揮されています。

東日本大震災以降は、復興支援のための活動やコンサートにも積極的に取り組み、音楽を通して人々に勇気と希望を与え続けています。また、コンクールの審査員や各種講習会の講師も務め、後進の育成にも力を注いでいます。2023年3月に不来方高等学校を退職されましたが、その後も非常勤講師として教鞭を執られています。

現在、村松氏は岩手県立不来方高等学校の非常勤講師を務める傍ら、岩手県合唱連盟の理事長としても活躍されています。これまでの功績が認められ、文化庁長官表彰、岩手県文化スポーツ表彰、矢巾町町民栄誉賞など、数々の賞を受賞されています。

村松氏の音楽的な特徴として、選曲の柱に以下の4つを挙げることができます。1つ目は、グレゴリオ聖歌や中世・ルネサンスのポリフォニー作品。2つ目は、日本語の作品。3つ目は、その合唱団ならではの個性的なレパートリー。そして4つ目は、聴衆のニーズに合わせた作品です。特に、村松氏の名前を広く知らしめたのは、1つ目のグレゴリオ聖歌や中世・ルネサンスのポリフォニー作品と、3つ目の合唱団の個性を引き出すレパートリーの選定です。

村松氏は、大学時代に皆川達夫氏が主宰する中世音楽合唱団で歌った経験から、グレゴリオ聖歌の持つ純粋な美しさに深く感銘を受けました。「グレゴリオ聖歌はユニゾンで歌われる単純なものですが、純粋に神への祈りの音楽であり、自分たちの演奏を聴かせようとすることよりも、自らを音楽に捧げるという純粋な喜びを知るようになるため、合唱を始めたばかりの若い年代にこのような音楽に触れることは貴重な経験になると思います。」と述べています。また、中世・ルネサンスの作品については、「現代の機能和声とは異なる独特の響きと各声部のしなやかなメロディの絡み合いによる絹織物を思わせ、ヨーロッパの石造りの教会でこれらの曲を演奏する時、自分たちの声が天から降ってくるような響きに胸が震えるような感動を覚えます」と語り、その魅力を伝えています。不来方高等学校が全日本合唱コンクールに出場する際の課題曲には必ずルネサンス・ポリフォニーが選ばれ、定期演奏会は毎年グレゴリオ聖歌の第一旋法である「Ave Maria」で幕を開けるのが恒例となっています。

3つ目の柱である合唱団の個性的なレパートリーについては、「どの合唱団もその合唱団ならではの個性的なレパートリーを持つことが必要だと思います」と述べています。不来方高等学校の特徴的なレパートリーとしては、フォーレ、プーランク、シュミットなどのフランス近代の作品が挙げられます。これらの作品は、村松氏自身が岩手県の名門女声合唱団フィオーレで歌っていた頃から取り組んできたものであり、不来方高等学校の「決して立派な声ではないけれど、軽く素直な」声質に合っていると評しています。また、不来方高等学校にはフランス語コースがあり、フランス人講師がいるという環境も、フランス近代の作品を演奏するようになった一因であり、フランスへの演奏旅行も実現するきっかけとなりました。

村松玲子氏は、その長年の指導経験と音楽に対する深い理解、そして合唱団の個性を引き出す選曲眼によって、日本の合唱界に多大な貢献をされています。

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