村越化石

村越 化石

村越化石（むらこし かせき、1922年12月17日 - 2014年3月8日）は、静岡県藤枝市の出身であり、独自の個性と深い感受性を持った俳人です。彼の本名は村越英彦（むらこし ひでひこ）です。ハンセン病とその後遺症に苦しみながらも、俳句活動を続け「魂の俳人」と呼ばれるようになりました。

生い立ちと経歴

村越は静岡県志太郡朝比奈村（現在の藤枝市岡部町）で生を受けます。1938年、彼は16歳のときにハンセン病を患い、当時の静岡県立志太中学校を退学し、東京に上京して治療に専念することになりました。この時期、周囲の療友から俳句を勧められ、彼はその魅力に目覚めることとなります。1941年には結婚し、同年、群馬県草津町の国立療養所栗生楽泉園に入所しました。ここで、「栗の花句会」に参加し、浅香甲陽から俳句の精神を学びます。

1943年には、各地の療養所で俳句指導を行っていた本田一杉からの指導を受け、深い影響を受けました。その後、1949年には大野林火の句集『冬雁』から感銘を受け、林火のグループに加わります。この頃、プロミンという新薬によってハンセン病の治癒が可能になり、彼は「最後のハンセン病患者」という覚悟を持ち、句作に挑むようになりました。

創作活動

1955年、プロミンの副作用により片目が視力を失い、1970年には全盲となるも、彼は旺盛な作品作りを続けました。この時期は、高原俳句会の指導や合同句集の刊行に尽力し、他の俳人たちにも大きな影響を与えています。彼の作品は多岐にわたり、数々の賞を受賞しました。特に角川俳句賞、俳人協会賞、蛇笏賞、山本健吉文学賞、紫綬褒章など、彼の作品がもたらした文化的影響は大きなものでした。

代表的な句には「除夜の湯に肌触れあへり生くるべし」「寒燈を消すとき母につながれり」「森に降る木の実を森の聞きゐたり」などがあり、その深い感情表現と繊細な自然描写は多くの人々に感動を与えました。彼の句集としては『獨眼』『山國抄』『端座』『八十八夜』などがあり、合計で9冊の句集を編纂しています。

受賞歴と地域貢献

村越化石は多くの文学賞を受賞し、その名声は俳句界のみならず、広く文学界にも広まりました。彼の故郷藤枝市では、「村越化石俳句大会」が開かれるなど、地元への貢献も顕著でした。2002年には、故郷の道の駅玉露の里に句碑が建立され、彼は60年ぶりに帰郷して除幕式に参加しました。

彼の人生は、病と闘いながらも創作を続けた感動的なものであり、その作品は今もなお、多くの人々に愛されています。2014年3月8日、彼は老衰により栗生楽泉園で91歳にて静かに逝去しました。彼の存在は、今も多くの俳人に影響を与え続けています。

もう一度検索