条野採菊

条野採菊の生涯と業績

条野採菊（じょうの さいぎく、1832年9月24日 - 1902年）は、江戸時代の末期から明治時代にかけて東京で活動した戯作者であり、ジャーナリスト、実業家、作家、劇評家として広く知られています。彼の本名は条野伝平でしたが、複数の号を持つことでも知られています。彼は東京の日本橋長谷川町で生まれ、地本問屋の家に育ちました。

幕末から明治初期の活躍

若き日の彼は、本郷三丁目の呉服屋で店員として勤務していた際に、17歳頃から五代目川柳こと水谷緑亭に師事し、文才を開花させました。彼の才能を評価した老中阿部正弘は、彼を可愛がり、その後も多くの戯作者たちと親交を深めました。1863年には三遊亭円朝や河竹其水とともに、三題噺の会『粋狂連』を設立し、文芸活動の幅を広げました。

1860年には人情本『春色恋廼染分解』を発表し、この作品から彼は人気を博するようになりました。その後も合巻や人情本を手がけ、1868年には福地源一郎が創刊した『江湖新聞』に従事しましたが、編集方針が問題視され、すぐに廃刊となりました。

東京日日新聞の創刊

1872年には西田伝助や落合幾次郎とともに、東京初の日刊新聞『東京日日新聞』を創刊しました。この新聞はさまざまな話題を取り上げ、広く人気を得ました。彼はこの新聞の運営に携わりながら、『近世紀聞』『東京町鑑』『和洋奇人伝』などの著作にも着手しました。

1880年代に入ると、彼は東京府会議員や神田区会議員としても活動を始め、1892年からは神田区会議長として地域の発展にも寄与しました。1884年には『警察新報』を発刊したものの、あまり部数が伸びず、1886年には娯楽を主軸にした『やまと新聞』を創刊しました。この新聞では彼自身の作品も掲載され、作家としての活動を再開しました。

文業の多様性

彼の著作には、西洋文学を基にした作品も多くありますが、外国語を理解していなかったため、福地桜痴の翻訳を参考にしているとされています。彼が執筆した作品には、1860年の『春色恋廼染分解』をはじめ、『酔興奇人伝』『春色江戸紫』『近世侠義伝』など、さまざまなジャンルが含まれています。また、歌舞伎の台本も手がけ、幅広い文芸活動を展開しました。

最後の時期

1902年、条野採菊は心臓病により70歳でこの世を去りました。彼の墓は谷中霊園にあり、『清高院晋誉去来採菊居士』と刻まれています。妻の婦美との間に三人の息子を持ち、その中の三男が後の著名な画家、鏑木清方となりました。彼の多彩な業績は、今なお語り継がれています。

まとめ

条野採菊は幕末から明治にかけて多くの文業に携わり、社交界でも広く知られた人物です。彼の作品や活動はその時代の文化的な背景を反映しており、後の作家たちにも大きな影響を与えました。彼の足跡を辿ることで、当時の文芸や社会の動向を知ることができるでしょう。

もう一度検索