東京マラソン2007

2007年（平成19年）2月18日に東京都内で開催された「東京マラソン2007」は、従来の東京国際マラソンや東京シティハーフマラソンを発展的に統合し、日本国内で初めて大規模な市民ランナーが参加する形式で実施された記念すべき大会です。フルマラソンと10kmの部に合わせて約3万人ものランナーが出場し、その運営には、後の大会にも引き継がれる様々な画期的な試みが導入されました。

大会の概要と参加者

大会はエリート部門と市民マラソン部門で構成されました。エリート部門（フルマラソン）は、2007年世界陸上選手権のマラソン男子日本代表選考レースを兼ね、日本陸上競技連盟登録選手のうち一定の基準記録を満たす者や推薦選手が出場しました。市民マラソン部門では、フルマラソンに最大2万5000人（大会当日満18歳以上で6時間40分以内に完走可能者）、10kmに最大5000人（大会当日満16歳以上で1時間30分以内に完走可能者）が参加対象となりました。合計3万人という規模は、当時の日本の市民マラソンとしては他に類を見ないものでした。

市民マラソン部門への参加は、前年（2006年）の夏に行われた事前エントリーによる抽選で決定されました。定員を大きく上回る応募があり、高い倍率となりました。また、大会当日の混雑軽減のため、参加者はマラソン開催前の2月16日・17日に東京ドームで開催されたプレイベント「東京マラソンEXPO」会場で事前に受付とゼッケン受け取りを済ませる方式が採用されました。これはその後の大会にも引き継がれる仕組みとなりました。

運営とサポート体制

大会運営は、約1万人もの無償ボランティアの協力によって支えられました。ボランティアは、給水所でのランナーサポートや、沿道の観衆への案内・誘導など、多岐にわたる活動を展開しました。特に注目されたのは、学生ボランティアや救急救命士から成るAED隊の配置です。このAED隊は、コース上で倒れたランナー2名に対し迅速な救命処置を行い、尊い命を救うという重要な役割を果たしました。この救命劇に関わった関係者が「ハッピーニュース」として顕彰されるなど、社会的な側面でも注目を集めました。

コースの安全確保のため、警視庁は約5,000人の体制で約7時間に及ぶ広範囲な交通規制を実施しました。この大会が、車両両サイドと後部バンパーに反射シールで「POLICE」と表示された新しいエンブレムのパトカーが正式採用され、初めて警備活動に投入された機会でもありました。

大会を彩るエピソード

第1回大会は、記憶に残る多くの場面が生まれました。女子マラソンの有森裕子選手が、この大会を現役最後のレースとして走りました。レース中に他の選手と接触して転倒し負傷するアクシデントに見舞われながらも、沿道の声援を力に完走を果たし、ゴールで合掌する姿は大きな感動を呼びました。

自らスターターを務めた石原慎太郎東京都知事は、スタート地点で市民ランナーたちから口々に「ありがとう！」という感謝の言葉をかけられ、感極まって涙を見せる場面がありました。この日の「ありがとう」という言葉への特別な思いを後に語っています。

著名人の参加も話題となり、ジョギング愛好家として知られる浅野史郎元宮城県知事は出場を申し込んだものの抽選に外れたことをウェブサイトで明かしましたが、一方、鈴木宗男衆議院議員は抽選に当選し、59歳ながらフルマラソンを4時間台で完走するという健脚ぶりを見せました。

大会当日は雪がちらつく厳しい寒さに見舞われ、運営面では課題も浮き彫りになりました。寒さによるバナナの品切れやトイレの混雑などが発生し、これらの経験から翌年以降の大会では給食物資の拡充やトイレの増設など、市民ランナーへのサポート体制が改善されることにつながりました。

また、フジテレビの中継でスペシャルサポーターを務めた石原良純氏の起用について、週刊誌で都知事の影響力を指摘する報道がありましたが、フジテレビ側や石原氏の所属事務所はこれを否定するコメントを出しています。

東京マラソン2007は、日本における都市型市民マラソンの先駆けとして、その後の大規模マラソン開催に大きな影響を与えた大会となりました。

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