東京一致神学校

東京一致神学校（とうきょういっちしんがっこう、英語名称: Tokyo Union Theological School）は、明治時代初期にあたる1877年から1887年までの約十年間にわたり活動した、日本のプロテスタント教会における重要な神学校でした。この学校は、特に長老派系の教育機関として知られています。

その設立の背景には、当時の日本におけるプロテスタント宣教における画期的な動きがありました。1877年、アメリカ合衆国長老教会、アメリカ・オランダ改革派教会、そしてスコットランド一致長老教会の三つの主要な改革派・長老派系の宣教団体（ミッション）が、伝道活動において連携を深めることを決定しました。この協力体制のもと、同年にはこれらのミッションによって「日本基督一致教会」が創立されることになります。この新しい合同教会の基盤を固め、将来を担う人材、すなわち教職者を育成することが喫緊の課題となりました。その必要に応える形で設立されたのが、東京一致神学校です。

学校設立に向けた具体的な動きは、1877年6月21日に三ミッション合同教育委員会が組織されたことから始まります。そして同年10月7日、東京・築地の外国人居留地にあった旧長老教会六番神学校の校舎において、歴史的な開校式が執り行われました。この時、東京一致神学校と正式に命名された学校には、聴講生を含む合計30名の学生が受け入れられ、教育がスタートしました。

開校にあたり、各ミッションから優れた人材が専任教授として推薦されました。アメリカ合衆国長老教会からは、後に多方面で活躍するウィリアム・インブリー（William Imbrie）が、アメリカ・オランダ改革派教会からはジェームス・アメルマン（James L. Amerman）が、そしてスコットランド一致長老教会からはサミュエル・マクラーレン（Samuel Maclay）が迎えられました。また、専任教授以外にも、デイヴィッド・タムソン（David Thompson）、エドワード・ローゼイ・ミラー（Edward Rothesay Miller）、そして日本の近代化に大きな影響を与えたグイド・フルベッキ（Guido Herman Fridolin Verbeck）といった著名な宣教師たちが講師として教鞭を執り、学生たちの育成にあたりました。

学校運営が進む中で、ウィリアム・インブリーを中心に、三つのミッションが協力して行っている男子教育事業全体の拡張が検討されるようになります。この議論の結果、東京一致神学校、東京一致英和学校、そして神田にあった英和予備校という既存の教育機関を統合し、より規模の大きな「クリスチャン・カレッジ」を設立するという構想が持ち上がりました。この構想が具体化し、新たな教育機関の設立へと繋がっていきます。

そして1887年1月19日、東京府より私立学院設置の正式な許可が下り、ここに「明治学院」が誕生しました。明治学院の設立に伴い、東京一致神学校はその役割を発展的な形で終え、明治学院の邦語（日本語）神学部として継承されることとなりました。これにより、東京一致神学校自体は単独の機関としては存在を終えたものの、その教育理念と機能は明治学院の一部として引き継がれたのです。ただし、神学部となった旧一致神学校の学生約30名については、明治学院の新校舎建設が間に合わなかったため、しばらくの間、築地の旧一致神学校の校舎で引き続き授業を受けることになりました。

東京一致神学校が輩出した人材の中には、後の日本のキリスト教史において重要な役割を果たした人物が数多くいます。特に第一期生からは、植村正久、井深梶之助、山本秀煌、三浦徹、瀬川浅、留川一路といった、明治期の日本における教会や神学を指導した著名な人物が巣立っています。彼らはこの神学校で受けた教育を礎に、それぞれの分野で活躍し、日本のキリスト教の発展に貢献しました。

このように、東京一致神学校は、わずか十年という短い期間の存在でしたが、日本におけるプロテスタント教会、特に改革・長老派の教職者養成において重要な役割を果たし、後の明治学院という包括的な教育機関へと発展していく上で不可欠な母体となった歴史的な学校であると言えます。

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