東京乗合自動車

東京乗合自動車の歴史

東京乗合自動車（とうきょうのりあいじどうしゃ）とは、かつて存在した日本のバス運行会社です。その起源は、1918年に設立された東京市街自動車に遡ります。日本におけるバス営業の先駆けとなるこの会社は、設立当初から東京の交通網の発展に寄与し、「青バス」という愛称で広く親しまれました。

設立の背景

1903年、大阪での内国勧業博覧会をきっかけに日本初の乗合自動車が運行され、その後広島、京都などで次々とバスサービスが開始されました。この状況を受け、東京市街でもバス運行が求められました。1911年には、東京市が電車事業を買収し、新たな交通機関の整備を計画していましたが、申請が却下されるなど、運行開始までの道のりは険しかったのです。

東京市街自動車の誕生

1917年、東京市内での乗合自動車営業の許可を目指してさまざまな出資者が集まり、ついに1918年に事業が始まります。初めての営業は、1919年3月1日に新橋から上野の間で行われ、運航当日は7,000人もの乗客を運ぶという好スタートを切りました。最初の運賃は1区10銭とされ、この価格帯で多くの利用者を獲得しました。

会社設立の中心人物は堀内良平であり、彼は歴史的な経済ネットワークを活用して資金を調達しました。設立初期には、軍用自動車補助法を利用し、国から補助金を受けることで、運行車両の増加を図りました。

経営危機と成長

運行開始からしばらくは順調にいったものの、1920年代には不景気や経営不振に悩まされました。1928年には社債がデフォルトするまでに至り、東京渡辺銀行の経営状態も厳しくなり、連鎖的に経営危機を迎えました。このような厳しい状況にもかかわらず、好調な時期に蓄えた顧客基盤や業務ノウハウを駆使し、経営再建を目指しました。

関東大震災の発生後、東京乗合自動車は交通復旧に尽力し、震災による市電の運休を利用して死傷者を無料輸送するなど、地域社会に貢献しました。この影響で営業は回復し、ますます需要が高まる中での成長を見せました。

女性車掌の導入と遊覧バス事業

東京乗合自動車は、女性車掌を初めて採用した会社の一つでもあります。これにより運賃の徴収が適正化され、列車内の運営がスムーズになるという成果がありました。

また、1925年からは東京市内を巡る遊覧バス事業も始まり、観光客へ新たなサービスを提供するなど、業務の幅を広げました。これにより、一般市民や観光客からも高い評価を得ました。

吸収合併とその後

1930年代に入ると、東京乗合自動車は経営が厳しくなり、ついには東京地下鉄道の傘下に入ることになります。戦時中は業務統制が進み、最終的に1942年に都営バスとして統合されました。

東京乗合自動車は、日本のバス運行の歴史に多大な影響を及ぼした重要な企業の一つとして、その名を残しています。今日の都営バスのネットワークの中にも、東京乗合自動車の遺産が息づいていると言えるでしょう。

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