東京高等学校 (旧制)

旧制東京高等学校：自由とエリートの伝統

旧制東京高等学校は、1921年（大正10年）11月に設立された官立の旧制七年制高等学校です。当時の略称は「東高」でした。尋常科4年と高等科3年の7年制という、当時としては珍しい一貫教育システムを採用した点が大きな特徴です。これは、1918年公布の第二次高等学校令に基づき、中学校に相当する尋常科を併設することが可能になったことにより実現しました。日本において、このような7年制一貫教育を行う官立高校は、旧制東京高等学校と旧制台北高等学校の2校のみでした。

自由主義教育と独特の校風

初代校長である湯原元一は、イギリスのパブリックスクールを参考に、自由主義的な教育を推進しました。自主性と自律性を重んじる校風は、他の旧制高校とは一線を画しており、「ジェントルマン高校」と呼ばれるほど洗練された雰囲気を持つ学校として知られていました。比較的裕福な家庭の子弟が多く入学し、寄宿舎である「大成寮」には1年生が原則として全員入寮していました。東京帝国大学への進学率は8割に達し、エリート教育機関としての高い評価を受けていました。エッセイストの三国一朗は、東京帝国大学に入学した際に遭遇したスマートで紳士的な学生たちの多くが東高出身であったことを回想しており、その独特の校風の一端を伺い知ることができます。

戦時下の変化

しかし、1941年（昭和16年）の太平洋戦争開戦を境に、東高の校風は大きく変化しました。自由主義的な雰囲気は薄れ、軍国主義的な風潮が強まりました。これは、文部省から派遣された校長による影響が大きかったとされています。当時の生徒の証言からも、学校全体に軍事色が強まり、自由な空気は失われていった様子がうかがえます。

戦時中の臨時措置と学制改革

太平洋戦争の激化に伴い、1942年と1943年には卒業時期が繰り上げられ、1943年入学の生徒からは修業年限が2年に短縮されました。終戦後の1945年9月には3年制に戻されましたが、2年間で卒業したのは1943年入学の生徒のみでした。

1948年（昭和23年）、GHQの指導による旧制高校制度の廃止に伴い、東高は新制東京大学に包括されました。高等科は東京大学教養学部と東京大学附属高等学校に、尋常科は東京大学附属中学校にそれぞれ再編され、旧制高校としての歴史に幕を閉じました。1922年4月の開校から1950年3月の廃校まで、総卒業生数は4007名に及びます。

その後と東高の遺産

旧制東京高等学校の校地は、現在の東京大学教育学部附属中等教育学校に継承されています。附属学校の入学式では、毎年学校長から東高の歴史と伝統が引き継がれており、校内には東高を記念するモニュメントや「東高記念館」が建立されています。また、多くの卒業生が政官界、財界、学術・文化界で活躍し、日本の発展に大きく貢献しました。

東高の歴史は、自由主義教育とエリート教育の融合、そして戦時下の変化という、激動の時代を反映したものです。その歴史と伝統は、現在も東京大学教育学部附属中等教育学校に受け継がれ、未来へと繋がっています。

年表

1921年（大正10年）11月: 7年制旧制高等学校として発足。
1922年（大正11年）4月: 開校。
1923年（大正12年）11月: 中野の新校舎に移転。
1925年（大正14年）4月: 高等科設置。
1928年（昭和3年）3月: 初の卒業生を送り出す。
1945年（昭和20年）: 空襲で校舎焼失。
1948年（昭和23年）: 新制大学への移行により廃校。
以降: 東京大学教育学部附属中等教育学校に伝統を継承。

歴代校長

湯原元一
塚原政次
近澤道元
藤原正
* 峰尾都治

主要出身者

旧制東京高等学校は、多くの著名人を輩出しました。政治家、官僚、実業家、学者、文化人など、各界で活躍した卒業生は数え切れません。

まとめ

旧制東京高等学校は、自由主義的な教育と高い学力によって、多くの優れた人材を育成した名門校でした。その歴史と伝統は、現代においても重要な意味を持ち続けています。

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