東光武三

東光武三：激動の時代を生きた外交官

東光武三（とうこう たけぞう）は、1906年1月19日に大阪府で生まれ、1945年4月1日に阿波丸事件で亡くなった日本の外交官です。彼はその短い生涯の中で、国際社会と日本の関わりが大きく変化していく時代を駆け抜けました。彼の死後、妻の孝子が中心となり、阿波丸会が設立され、その活動は多方面に及びました。

生い立ちと学歴

東光武三は大阪市東区平野町を本籍とし、旧制天王寺商業学校（現在の大阪市立天王寺商業高等学校）を経て、旧制神戸高等商業学校（現在の神戸大学）に進学しました。彼は商業分野だけでなく、国際的な舞台で活躍するための基礎を築きました。1930年には高等試験外交科に合格し、外交官としての道を歩み始めました。

外交官としてのキャリア

1931年、旧制東京商科大学（現在の一橋大学）本科を卒業後、東光は在英国外務書記生としてキャリアをスタートさせました。その後、1932年には在英国外交官補として、さらに1933年にはロンドン世界経済会議全権委員随員として国際会議の場に立ち会いました。1934年には在シドニー領事官補を務め、1936年には外務省欧亜局第三課外務事務官に任命されました。1940年になると、外務省欧亜局第三課長心得、南洋局第一課長心得、南洋局第二課長心得を歴任し、1941年には外務省南洋局第二課長に就任しました。

太平洋戦争開戦後は、大東亜省南方事務局文化課長として、また日泰攻守同盟条約慶祝答礼遣タイ特派大使随員としてタイに派遣され、第三等白象勲章を受章しました。1943年には大東亜省南方事務局政務課長を務め、百万象白傘勲章コンマンドールも受章しました。1944年には大東亜要員錬成委員会幹事となり、叙従五位に叙せられました。

悲劇的な最期

1945年、東光は在ラングーン総領事に任命されましたが、その直後の阿波丸事件により命を落としました。彼は大東亜省参事官の職にあり、死後、叙正五位、従四位を追陞されました。

妻・東光孝子の戦後の活動

東光武三の妻である東光孝子は、大阪朝報の創刊者・社主である岡嶋松次郎の長女で、大阪府女子専門学校（現在の大阪公立大学）を卒業しました。夫の死後、彼女は辻嘉六の秘書や日加協会事務局長を務めました。1994年に78歳で亡くなるまで、彼女は戦後の混乱期において、日本の復興と国際交流に尽力しました。

阿波丸事件

東光武三が命を落とした阿波丸事件は、太平洋戦争末期に日本の病院船であった阿波丸がアメリカの潜水艦によって撃沈された事件です。この事件は、多くの犠牲者を出し、戦後の日米関係にも大きな影響を与えました。東光の死は、この悲劇の象徴の一つとして、歴史に刻まれています。

東光武三の生涯は、激動の時代において国際社会で活躍した外交官の姿を伝えています。彼のキャリアと妻・孝子の戦後の活動は、日本の近現代史を語る上で重要な一部となっています。

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