東医宝鑑

東医宝鑑（とういほうかん）

『東医宝鑑』（동의보감）は、李氏朝鮮時代に編纂された医学書であり、東アジアの伝統医学において重要な位置を占めています。許浚（ホ・ジュン）によって編纂され、1613年に刊行されました。

歴史的背景

16世紀、朝鮮では明の医学が主流となり、伝統的な朝鮮医学が衰退していました。しかし、明の医学が朝鮮半島の環境や病理に合わない点や、度重なる戦乱による明からの薬の輸入難から、朝鮮独自の医学の必要性が高まりました。

宣祖の命により、1596年に許浚を中心に編纂事業が開始されましたが、丁酉再乱（慶長の役）によって中断。その後、許浚が14年の歳月をかけて完成させ、光海君時代の1613年に『東医宝鑑』として刊行されました。

国際的な広がり

『東医宝鑑』は、朝鮮国内だけでなく、中国や日本にも広まりました。日本では、徳川吉宗の命により1724年に日本版が刊行され、その後も再版されました。中国でも1763年に乾隆版本が刊行されるなど、東アジアの医学に大きな影響を与えました。

2009年には、ユネスコの世界記録遺産に登録され、その価値が国際的に認められています。

内容構成

『東医宝鑑』は全25巻で構成され、内科、外科、婦人科、小児科など、幅広い分野を網羅しています。

序（目録、上下2巻）
内景篇（内科、4巻）：身形、五臓六腑など
外形篇（外科、4巻）：頭、面、耳鼻、四肢など
難病編（11巻）：疫病、婦人科、小児科など
湯液編（薬物、3巻）：薬物の種類と効能
鍼灸編（1巻）：鍼灸治療

理論よりも実用性を重視し、病気の診断から治療まで、具体的な方法が詳細に記述されています。

医学的特徴

『東医宝鑑』は、明の李朱医学を基礎としつつ、朝鮮独自の医学を取り入れています。道教思想の影響も見られ、許浚の思想が反映されています。また、様々な医学書を参考に、実証主義に基づいた記述がなされており、朝鮮の実情に合った医学書として、朝鮮医学を集大成した内容となっています。

参考文献

『医学入門』
『丹渓心法』
『医学正伝』
『古今医監』
『万病回春』
『得效方』
『聖済総録』
『直指法』
『銅人経』
『東垣十書』
『証類本草』
『郷薬集成方』
『医林撮要』

現代への影響

『東医宝鑑』は、現代においても伝統医学の研究や臨床において重要な資料として活用されています。その内容は、現代医学にも通じる普遍的な知識を含んでおり、東アジアの伝統医学の発展に貢献しています。

関連人物

許浚（ホ・ジュン）：編纂者
楊礼寿
李希憲

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